ソフトバンクグループは、第一四半期に4,776億円の損失を出しました。このまま推移すると、本年度決算は日本史上最大の1兆9千億円の損失になります。その最大の原因は、サブリースをビジネスモデルとするWeWorkにあると言っても過言ではありません。
ソフトバンクグループのWeWork問題とは何か?
ソフトバンクグループは、世界最大のシェアオフィス事業者であるWeWorkに巨額の投資を行っていますが、その経営不振により、大きな損失を被っています。WeWorkは上場に失敗し、株価が低迷しており、上場廃止の可能性もあります。この問題はソフトバンクグループの業績低下の大きな要因となっており、市場からの信頼も失墜しています。本コラムでは、WeWork問題の背景と現状、ソフトバンクグループの対応と今後の展望について解説します。
WeWorkの上場失敗と株価低迷
WeWorkは2010年に創業されたシェアオフィス事業者で、世界中に800以上の拠点を展開しています。WeWorkはオフィススペースを借りてデザインし、会員に提供するビジネスモデルで、コミュニティやイベントなどを通じて会員同士の交流やビジネスチャンスを創出することを目指しています。WeWorkは急成長を遂げ、2019年には470億ドル(約7兆円)の時価総額を誇っていました。
しかし、2019年8月に上場申請した際に、創業者であるアダム・ニューマン氏の不適切な行為や会計の問題が明らかになりました。ニューマン氏は自らが所有する不動産をWeWorkに高額で貸し付けたり、自社株を売却したり、自身の権限を強化したりするなど、利益相反や統治体制の欠陥が指摘されました。また、WeWorkは赤字が拡大し、収益性や将来性に疑問が持たれました。これらの問題により、市場からの評価が急落し、上場申請を取り下げることになりました。
その後、ソフトバンクグループは更に1兆円を投資し、ニューマン氏を退任させて経営陣を入れ替えました。新たなCEOにはマーセル・クラウフォード氏が就任し、コスト削減や事業再編などのリストラ策を実施しました。2020年12月にはSPAC(特別買収目的会社)と合併して上場することが発表されました。SPACとはブランクチェックカンパニーとも呼ばれる会社で、上場後に他社と合併することで資金調達する手法です。WeWorkはこの手法を用いて上場することで、市場からの評価や資金調達力を高めることを期待していました。
しかし、2021年10月に上場した後も、株価は低迷しています。WeWorkの株価は1ドルすら割れており、上場廃止の可能性もあります。WeWorkは事業継続に関して「重大な疑義」を公表しており、会員の解約が増え、赤字が続く中、今後の現金確保に疑念が生じています。WeWorkは存続するために、手元流動性と収益性の改善が必要だと述べています。具体的な対策として、新株の発行による追加資本調達、経費の抑制、会員解約の減少などが挙げられています。23年4〜6月期の最終損益は3億9700万ドルの赤字でした。
ソフトバンクグループの業績低下と対応
ソフトバンクグループは、WeWorkに巨額の投資を行っているソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)の運営会社です。SVFは世界最大のテクノロジー投資ファンドで、AIやIoTなどの未来技術に関連する企業に投資しています。WeWorkはSVFの主要な投資先であり、その経営不振はSVFの業績にも大きな影響を与えています。
ソフトバンクグループは23年8月に中間決算を発表しましたが、営業損益が155億円の赤字となりました。この悪化した業績は、WeWorkの経営不振によるもので、SVFが巨額の損失を計上したことが主な要因です。ソフトバンクグループはWeWorkに対して累計で約2兆円以上の投資を行っており、そのうち約1兆円分は償却済みです。しかし、残りの約1兆円分はまだ回収できておらず、WeWorkの株価低迷により、その価値が目減りしています。ソフトバンクグループはWeWorkに対して追加的な支援を行うかどうかを検討していますが、その判断は難しいものとなっています。
一方で、ソフトバンクグループはWeWork問題に対して真摯で謙虚な姿勢で問題に取り組んでいます。孫正義社長は決算説明会で、この問題を「大幅減益」と「WeWork問題」と表現しました。特にWeWork問題は市場からの大きな懸念材料となっており、孫社長は「自分自身が間違えた」と認め、「反省しなければいけない」と述べました。また、「WeWork問題を解決するために全力を尽くす」と宣言し、「WeWork問題を乗り越えることができれば、ソフトバンクグループはさらに成長することができる」と自信を示しました。このように、孫社長は市場からの信頼回復やステークホルダーへの説明責任を果たすために、真摯で謙虚な姿勢で問題に取り組んでいます。
ソフトバンクグループの今後の展望
ソフトバンクグループはWeWork問題を解決するために、さまざまな取り組みを行っています。まず、WeWorkの経営陣を刷新し、事業の見直しとコスト削減を進めています。また、ソフトバンクグループはWeWorkの株式を買い取り、支配的な立場になることで、WeWorkの将来性を高めるとしています。さらに、ソフトバンクグループは自社の資産売却や株式買い戻しを通じて、自己資本比率の改善や株主還元を図ると発表しています。これらの施策により、ソフトバンクグループはWeWork問題からの脱却と、自社の成長戦略の再構築を目指しています。
執筆者 萩原 大巳 所見
リモートワークの影響で、アメリカ・ヨーロッパ・中国のオフィス面積は大幅に減少しています。カリフォルニア州では、オフィスの空室率が戦後最高の30%を超え、深圳・北京・上海でも20%を超える空室率となっています。アメリカと中国の不動産バブルは崩壊し、デフォルトが相次いでおり、長期的な不況に陥る可能性が高いです。
企業はオフィスの見直しを行い、フレキシブルオフィスに移行しています。競合はサブリース業者や不動産業者だけでなく、異業種からも参入しています。家賃は下落傾向にあります。
日本でも、不動産業者以外の異業種からフレキシブルオフィスを運営する企業が増えています。コワーキングプレイス、サービスオフィス、セットアップオフィスなど、選択肢は多様化しています。東京の中小ビルの空室率は2023年のインターネット調査では20%に近づいています。中小個人経営者413万社は事業再構築や企業再生に向けてDXを活用し、ネットとリアルの融合に挑戦しています。
しかし、サブリース禁止や高額な敷金、原状回復費用や移転先のB工事など、日本の借地借家法では時代に適応することが難しい問題があります。
オフィスや店舗のワークプレイスの見直しに関する全てのことについて、無料でご相談承ります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。ご成功を祈念しています。
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萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)
一般社団法人RCAA協会 理事
オフィス移転アドバイザーとしての実績は、600社を超える。原状回復・B工事の問題点を日経セミナーで講演をする。日々、オフィス・店舗統廃合の相談を受けている。オフィス移転業界では、「ミスター原状回復」と呼ばれている。 |