進む強権統治 「人・物・金・情報」が香港から逃げ出し、香港の空洞化が始まった

2024.04.12

香港賃貸トラブル回避ガイド

 

「一国二制度」の下での自由な香港は、国家安全維持法と国家安全条例が施行されたことで、その地位を失いました。かつてアジアの金融の中心地として栄えた香港ですが、多くの金融機関やグローバル企業がシンガポールや東京へと事務所や店舗、さらには住居を移転させるに至り、次々と閉店しています。

 

このような状況は、今後も外国企業の撤退が加速することを意味しており、まさに人々や貴重な情報が香港を離れ、その「空洞化」が進行しているのです。

 

企業が撤退する際には、元の状態への復旧や、新たなワークプレイスの設立に関する多くの問題が生じます。これらに関する相談が、当協会に寄せられることが増えています。

 

香港の賃貸契約は、英国モデルに基づいた比較的自由な契約(ソフトロー)を採用していますが、契約不履行にはペナルティが課されることになります。

 

この情報が参考になれば幸いです。

 

香港ライフを彩る賃貸物件のスムーズな退去手続きとポイント

 

香港の住居

 

香港での賃貸生活も一区切り。次のステップに進むためには、退去の手続きをスムーズに進めることが重要です。以下のガイドで、退去までの流れとポイントをわかりやすく説明します。

 

1.   オーナーや仲介会社への丁寧な連絡

香港で賃貸物件を退去する際は、まず物件オーナーや仲介会社に退去の意思を明確に伝えることが重要です。(書面による解約予告)通常、契約満了の1~2ヶ月前には文書で通知するのが一般的。この手続きは、次のテナント探しや、退去プロセスの円滑化に寄与します。明確なコミュニケーションにより、双方の準備と期待の調整が可能となり、トラブルを未然に防ぎます。

 

2.   オプション期間とフィックス期間の巧妙な退去戦略

香港の賃貸契約において、フィックス期間は解約が困難な期間を指し、オプション期間はより柔軟な退去が可能な期間です。フィックス期間内に退去を希望する場合、違約金の支払いが発生します。(賃貸期間中の解約)通常の賃貸契約は、英米スタイルの定期建物賃貸借契約です。オプション期間ではこのようなペナルティは適用されにくいです。したがって、退去計画を立てる際には、契約内容を十分に理解し、適切なタイミングを選ぶことが重要です。これにより、余分な費用を避け、スムーズな移行が実現します。

 

3.   ストレスフリーな退去手続きと心地よい立ち合い

退去時、香港では物件の状態を確認するための立ち合いを行います。このプロセスでは、物件オーナーまたは管理会社の代理人と共に、物件内の状態を細かくチェックします。損傷や不具合がないか、改修が必要な箇所はないか等を確認し、その結果は文書に記録されます。この記録は後々の保証金返還や、原状回復に関するトラブルを避けるためにも非常に重要です。立ち合いでは、事前に物件の清掃や小さな修繕を済ませておくことが望ましいです。

 

4.   美しく整える原状回復へのプロアプローチ

香港の賃貸物件を退去する際には、原状回復にプロのアプローチが欠かせません。入居時の美しさや機能性を再現するために、専門家の手による的確な作業が必要です。壁の補修やクリーニング、設備の点検などを丁寧に行い、快適な生活の幕引きを繊細に演出します。これにより、オーナーや次の入居者に対する信頼を築き、良好な関係を維持します。プロのサポートにより、円滑な退去手続きと美しい物件の状態復帰を実現します。

 

5.   保証金(デポジット敷金)の円滑な返金タイミング

香港での賃貸契約終了後、保証金の返金は、物件の最終的な確認と原状回復作業が完了した後に行われます。通常、退去から1ヶ月程度で返金されます。保証金が返金される正確な時期を知るためには、退去前にオーナーや管理会社とこの点について確認しておくことが重要です。また、保証金の一部または全額が原状回復費用として差し引かれる場合があるため、その詳細も合わせて確認しておくと良いでしょう。

 

6. 強制退去時の知恵と法的知識: 安全な未来のための確かなアドバイスと指針

香港では、不動産の売却や解体、または契約違反によって強制退去を余儀なくされる場合があります。また債務不履行のペナルティが課せられます。これらの状況は予期せぬトラブルにつながり得るため、契約を結ぶ際には、このような事態が発生した場合の条項を慎重に確認し、理解しておくことが重要です。特に契約違反が原因での強制退去は、借り手の信用問題にも影響を与えかねないため、契約内容を遵守し、定期的なコミュニケーションを取り、問題が発生した際には迅速に対応することが必要です。英米スタイルの賃貸契約はフェアですが、専門知識が低いと契約負けをします。賃貸人、賃借人ともに代理人を活用するのが通常です。

 

 

香港・深圳・広州の原状回復コンサルタントが語る「ワークプレイス(事業用賃貸)撤退・縮小移転」時のポイント

 

香港ビル街

 

「原状回復」とは、オフィスや店舗などの内装を、入居前の状態に戻す作業のことを指します。これには、借室の壁の撤去、壁紙やカーペット、タイルの表面加工の除去、天井や照明や空調その他設備の元の状態への復旧、看板の取り外し等が含まれます。

 

また、このプロセスにはビルの公認業者(指定業者)が行う作業も含まれます。これには空調、消防、水道の設備の原状回復が含まれ、特に消防設備に関しては、ほとんどのビルで専門の指定業者が定められています。しかし、空調や水道設備について指定業者がいない場合、テナント自身で業者を手配し、内装会社に原状回復を依頼できます。

 

もし入居時に内装に手を加えていない場合、原則として追加の工事は不要です。ただし、ビルによっては、エアコンのクリーニングを実施し返却するなどの特別な条件が設けられていることもあります。原状回復の具体的な条件は場所によって異なるため、細部にわたって確認することが重要です。

 

さらに、個人所有の物件の場合、前のテナントが残した家具や内装をそのまま利用して退去が許可されるケースもあります。いずれにせよ、契約内容をしっかりと確認し、必要な措置を講じることが求められます。

 

香港・深圳・広州は、居抜き入居者が多く、合理的な香港人は価値のある物品はそのまま再利用します。居抜きの場合、「退去時にどこまで原状回復義務があるのか?」原状の確定が一番重要となります。通常は賃借人の資産を撤去する「スケルトン戻し」が事業用不動産では一般的です。

 

 

スプリンクラー

Q:内装変更でスプリンクラーを追加設置しましたが、なぜ退去時に元の状態に戻す必要があるのでしょうか?

A:スプリンクラーの配置は、全てのエリアに水が均等に行き渡るよう、スプリンクラーヘッドごとの放水範囲、天井との距離、隣り合うスプリンクラー間の間隔など、細かな計算に基づいて設定されています。そのため、お部屋の壁を取り除くなどの原状回復作業を行った後は、スプリンクラーも再び、その空間に最適な配置と数に調整する必要があります。オープンシーリングや吊り下げ天井などで天井の高さに変更が生じた場合も同様で、新たな天井高に適したスプリンクラーの位置と数に調整することが求められます。

 

エントランスドア

Q:ガラス製の耐火ドアに変更しましたが、退去時には以前の鉄製ドアを取り戻さなくてはいけないのでしょうか?

A:この件については、契約内容や管理会社のルール、さらには交渉の結果によって様々な可能性があります。管理会社の規則に従う必要がある場合、契約に記載された特定のサイズ、色、耐火性能を持つドアを取り付ける義務が生じます。過去の事例では、耐火性ガラスドアを設置したテナントが、退去の際に特殊な木目と色を持つ1時間耐火の木製ドアに戻す必要があったこともあります。自然の木目を模したパターンは、全く同じものを再現することは不可能で、管理会社の厳しい基準を満たすためには、類似のものを選んでも再製作が必要になる場合があります。ほとんどのビルには入口ドアに関する明確な規定があり、これに従うことが必須です。耐火ドアの取り付けは、適切なテストと認証が必要であり、かなりのコストがかかります。もし可能であれば、オフィス内や倉庫などにスペースを確保して、元の鉄製ドアを保管し、退去時に再設置することを検討すると良いでしょう。

 

空調設備

Q:入居時に設置したエアコンも、撤去が必要なのでしょうか?

A:内装を元通りにするプロセスには、通常、エアコン設備の撤去も含まれます。ビルがスケルトン状態で引き渡された場合、基本となるファンコイルユニットや空気の出入り口、サーモスタットが最小限設置されていることが一般的です。そのため、これらの基本構成に戻して返却することが多くあります。ただし、これは契約の詳細や物件オーナーの方針に大きく左右されるため、事前にしっかりと条件を確認することが重要です。特に高品質なビルでは、原状回復のコストがかなり高くなる傾向にあります。オフィス移転を検討している場合、新たな内装費や引越し費用だけでなく、将来の退去時に必要となる原状回復費用もあらかじめ概算見積を取っておくと、計画が立てやすくなります。内装に関する質問や懸念事項があれば、内装会社に相談してみると良いでしょう。その他の疑問点があれば、いつでもお問い合わせください。

 

 

萩原大巳

萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)

一般社団法人RCAA協会 理事
【協会会員】株式会社スリーエー・コーポレーション 代表取締役CEO

  • ワークプレイスストラテジスト
  • ファシリティプロジェクトマネージャー

オフィス移転アドバイザーとしての実績は、600社を超える。原状回復・B工事の問題点を日経セミナーで講演をする。日々、オフィス・店舗統廃合の相談を受けている。オフィス移転業界では、「ミスター原状回復」と呼ばれている。