最近、「原状回復 英語」「B工事 英語」「資産除去債務 英語」など、日本語の法律用語を英語では何というのか、そんな検索が多くなりました。
先般も、エールフランス様との原状回復・B工事のアドバイザリー契約締結の際、英語には存在しない「原状回復」「B工事」という単語について訊かれました。
法律はローカルであり各国で違います。経済はグローバリゼーションにより、会計基準(IFRS)、個人情報保護(GDPR)、環境保護(SDGs)などグローバルスタンダードに向かっています。
「原状回復」「B工事」「敷金」「資産除去債務」など、日本の借地借家法も会計基準も独自に深化したため、バイリンガルのビジネスパーソンでも詳しい説明が必要になります。私もBBC英国放送、CNN、ターナージャパンなど、「原状回復・B工事」適正査定受託、適正価格発注業務代行の説明では苦労しました。
「原状回復」「B工事」「敷金」「資産除去債務」は英語ではなんと表現する?
原状回復
「原状回復」は、英語では「restoration to original state (condition)」となります。「original state」とは、貸主・借主が原状を承諾合意した状態をoriginal state(原状)と定義するわけです。法律用語ですと「restoration in intergrum」 となり、ラテン語で、国際法上では「元の状況に戻す」や「戦争で現状を変更」「国境を元に戻す」などの意味に使われる事が多いです。これは損害賠償とセットでおこなわれます。
参考資料
- RCAA協会公式YouTubeチャンネル:英語動画「原状回復Ver.」
B工事
「B工事」は、「b construction」では意味が通じません。
貸主の資産A、借主の資産C、借主の要望で、デザイン設計により貸主の資産に変更が生じる、貸主借主の資産が繋がり、一体の建築物になる、などを「B工事」と呼んでいます。具体的には、電気、空調換気、その他設備の増設、移設、除去の工事を「B工事」として工事区分を定めているわけです。
A工事、B工事、C工事の工事区分を説明して、日本の賃貸契約の慣習を理解していただかないと海外のビジネスパーソンには理解してもらえません。
「Japanese store development projects – glossary of terms」
A Construction / B Construction / C Construction
This terminology is often heard when a tenant opens a store in a commercial facility (e.g. shopping center) or a multiple-tenant building;
引用元:福徳社ブログ2014-04-07
(https://fukutokusha.jp/blog-english/glossary-of-terms/)
参考資料
- RCAA協会公式YouTubeチャンネル:英語動画「B工事Ver.」
敷金
「敷金」は、「Security deposit」や「caution money」などよく使われます。家賃の債務不履行を担保することが目的です。
敷金から差引く「bearing plate」は、 敷金返還「deduct money from security beposit」、 敷金を預託する・払うは「pay deposit」 となります。
アメリカ、カナダ、英国、オーストラリア、英連邦の*ファイブ・アイズの国は、UKを範としています。
大陸ヨーロッパ、EU・米・英、どちらとも敷金を預託する習慣はありません。連帯債務保証人もありません。貸主、借主双方に専門家が代理人となって詳細を詰めます。家賃未払いの担保としては、*L/Cが活用されます。米英スタイルもEUスタイルも、デポジットがあっても少額です。
*ファイブ・アイズ…米・英など英語圏5カ国で機密情報共有の枠組み
*L/C…Letter of Credit(信用状)
参考資料
- 原状回復費.com「海外の原状回復費とオフィス賃貸事情・アメリカ編」
資産除去債務
「資産除去債務」は、「Asset retirement obligation」といいます。直訳どおり有形固定資産を一定の期間で除去する会計スタイルです。国際会計基準はIFRS、米国会計基準はUS-GAAPです。世界のスタンダードとしてはIFRSです。
資産除去債務として、ビルインのテナントなどの入居工事(原状変更工事)、有形固定資産の取得にあたり原状回復工事は除去債務にあたります。資産、負債に両計上しなさいという事です。
なぜ英語検索が激増しているのか?
経済がグローバル化した今日、上場企業の株取引の7割は外資です。特にITには国境はありません。
中小企業の持株比率もかなり外資の割合が高くなっています。情報開示や投資家保護のため会計基準もグローバルスタンダードに向かっています。その為、日本の法律用語は英語では何というのか?と、検索が増えているのです。
国際会計基準も米国会計基準も日本会計基準も違いはなくなりつつあります。国際会計基準一つで、世界のどの市場でも上場できるのがコスト的にも良いし企業評価がフェアです。
参考資料
- RCAA協会「資産除去債務」についてはコチラ
萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)
一般社団法人RCAA協会 理事長
オフィス移転アドバイザーとしての実績は、600社を超える。原状回復・B工事の問題点を日経セミナーで講演をする。日々、オフィス・店舗統廃合の相談を受けている。オフィス移転業界では、「ミスター原状回復」と呼ばれている。 |