結論から言うと、指定業者から最初に提示される原状回復費用の坪単価は、規模を問わず中央値で約10万〜12万円です。一方、RCAA協会が適正査定を行った2026年5月時点の実績では、査定の結果を踏まえて当事者が合意した金額は坪あたり中央値で約5.8万〜7万円、初回見積に対する適正化率は平均36.76%でした。 規模・ビルグレード・契約内容・工事範囲によって同じ広さでも数百万円単位の開きが生じるため、本当に大切なのは「相場を知ること」よりも、提示された見積書が自社にとって適正かどうかを見極めることです。
オフィス移転や退去の際、多くの企業が直面するのが原状回復工事です。ビル管理会社や指定業者から見積書を受け取った担当者の方からは、次のような声がよく聞かれます。
- 「この原状回復費用は適正なのだろうか?」
- 「指定業者だから、このまま発注するしかないのだろうか?」
- 「退去費用として妥当な金額なのだろうか?」
と疑問を抱く方も少なくありません。
原状回復工事は頻繁に経験するものではないため、多くの企業にとって専門知識が求められる業務のひとつです。
そのため、
- 「提示された原状回復見積が適正な金額なのか分からない」
- 「指定業者の見積をそのまま受け入れるべきか判断できない」
- 「契約上どこまでが借主負担なのか分からない」
- 「敷金で足りると思っていたが追加費用が発生しそう」
- 「退去費用を抑える方法があるのか知りたい」
といった不安を抱えながら退去手続きを進めるケースも少なくありません。
原状回復費用は、オフィスの規模やビルグレードによって大きく異なるだけでなく、契約内容や工事範囲によっても数百万円単位の差が生じることがあります。
そのため重要なのは、単に相場を知ることではなく、「提示された見積書が適正かどうか」を見極めることです。
本記事では、原状回復費用の坪単価相場に加え、指定業者制度によって見積金額が高額になりやすい理由、見積チェックのポイント、退去費用を適正化するための考え方について解説します。
オフィス原状回復費の相場は?坪単価2.75万〜44万円、何でこんなに違うの?
原状回復工事費は、オフィスの規模や立地、ビルのグレード、設備仕様などによって大きく異なります。
RCAA協会の原状回復適正査定実績データをもとにすると、原状回復工事費の目安となる坪単価は以下のとおりです。
| 規模 | 指定業者の初回見積(坪単価・中央値/中心帯) | 合意金額(坪単価・中央値/中心帯) | 初回見積からの適正化率(平均・金額ベース) |
|---|---|---|---|
| 100坪未満 | 約10.3万円/6.5万〜17.3万円 | 約5.8万円/3.8万〜10.8万円 | 39.4% |
| 100坪超〜300坪 | 約11.0万円/7.6万〜15.2万円 | 約7.0万円/5.0万〜9.2万円 | 36.1% |
| 300坪超 | 約12.3万円/8.0万〜17.1万円 | 約7.1万円/5.3万〜12.6万円 | 36.6% |
※RCAA協会 原状回復適正査定実績データ(2024年10月最新版)より
株式会社スリーエー・コーポレーションはRCAA協会の会員企業です。「初回見積」は指定業者から提示された見積金額、「合意金額」は建築・積算の専門家による適正査定の結果を踏まえて当事者が最終的に合意した金額です。
坪単価は各案件の金額を坪数で割った値の中央値および中心帯(真ん中50%が収まる範囲=四分位範囲)。適正化率は初回見積の総額に対する合意金額総額の比率から算出した金額ベースの平均値で、個別案件の費用・査定結果を保証するものではなく、一般的な傾向としてご参照ください。

この実績から見えてくるのは、指定業者から最初に提示される坪単価は、規模を問わず中央値で約10万〜12万円と高めに出やすいということです。一方、契約内容や工事範囲を精査した適正査定の結果を踏まえた合意金額は、坪あたり中央値で約5.8万〜7万円となっており、初回見積に対する適正化率は全体平均で36.76%です。
特に築浅のAグレードビルやハイグレードビル、外資系の特殊な内装仕様の物件では、初回見積の坪単価が中心帯を大きく上回り、坪20万円を超える事例も含まれます。設備仕様や工事範囲によって、同じ規模でも数百万円単位の開きが生じます。
また近年は、建設資材価格の上昇や人手不足の影響により、原状回復工事費が想定以上に高額になるケースも見られます。その結果、資産除去債務(ARO)として計上していた予算を超えたり、預託していた敷金だけでは費用を賄えなかったりすることもあります。
原状回復費って、高いよね? #shorts – YouTube
一般社団法人RCAA協会の理事長 萩原 大巳(はぎわら ひろみ)が、「オフィス・店舗において 原状回復費がなぜ高いのか!?」をズバリ解説!■お問い合わせ先■ https://rca…
原状回復費用の指定業社見積は入居工事(原状変更工事)業社の倍額以上が当たり前‼

大多数の指定業社から原状回復見積もりとして提示される金額は、一般的な入居工事業社よりも高く倍額以上が当たり前の業界です。
その原因をグローバル不動産会社C&W社アジア統括不動産アナリストは、ズバリ「ビルに紐づけられた指定業社が原因」と喝破しています。
そのうえ、GX(グリーントランスフォーメーション)に逆行するスクラップ&ビルドの移転元原状回復、移転先B工事、高額な預託金(敷金制度)、これがグローバル企業がアジアのヘッドオフィスを国際都市東京にリーシーングする最大の障壁と言い切っています。 どこまでも自由パーソナライズの経済であるアメリカ人なら暴動が起こると言っています。そのぐらい日本の原状回復移転先B工事と敷金制度はハードローで変化に対応できない制度であると批判しています。
世界のオフィス内装工事の高い都市ベスト3
日本だけに存在する「B工事」「原状回復」「指定業者制度」が、オフィス移転コスト高騰の原因となっています。世界比較を交えながらその構造的課題を解説し、適正査定と発注によるコスト最適化…
上記の課題解決を目的として、日本会計基準も資産除去債務を取り入れました。敷金(預託金)については、改正民法第622条の2第1項で敷金の定義目的、返還時期を明文化しました。原状回復においても、改正民法第621条で原状回復の定義範囲、工事内容の明文化は全て貸主責任であると定められました。
会計基準、借地借家法もグローバルスタンダードを考慮してよりフェアになりつつあります。
これは、原状回復工事費は競争原理を重んじ適正価格まで値下げする権利を国家が保証してくれたということです。その際、原状回復は敷金返還とセットなので借主の債務を全て履行したら速やかに敷金返還をしなさいと法律で約された事を意味します。
もちろん、すべてのビル管理会社指定業社が割高な見積もりを出してくるわけではなく、最初から適正価格の見積もりを出してくるケースも稀にあります。ただ、不当に高額な見積もりを提示する会社が多いことも事実です。しかも、見積もりが適正かどうかを見抜き、適正価格まで減額させるのは、建築設備、宅建、法務など専門的な知識がなければ非常に困難です。
なぜ初回見積もりが入居工事業者よりも高くなるのか?
原状回復工事において、見積金額が高額になりやすい背景のひとつが「指定業者制度」です。
多くのオフィスビルでは、退去時の原状回復工事について「貸主指定業者への発注」を求める契約となっています。
指定業者制度は、ビル設備の安全管理や工事品質の維持という目的がありますが、一方で借主が工事会社を自由に選べないため、価格競争が起こりにくいという特徴があります。
そのため、提示された見積書が市場価格と比較して適正なのか判断しづらくなります。
実際、大型ビルの原状回復見積では、初回見積の坪単価が8.8万円〜16.5万円程度になるケースも少なくありません。
しかし、これはあくまで初回見積です。
RCAA協会およびスリーエー・コーポレーションが実施した適正査定事例では、工事内容や契約内容を精査することで、平均20〜30%程度の削減につながったケースも確認されています。
さらに、RCAA協会が公開する原状回復適正査定実績データ(2024年10月最新版)では、一級建築士による原状回復査定160件の平均削減率は36.97%となっています。
つまり、指定業者から提示された見積書がそのまま適正価格とは限らず、見積チェックによって見直しの余地があるケースも少なくないのです。
なぜ初回見積もりが相場よりも高くなるのか?
原状回復の初回見積もり価格が入居工事業社(一般的な工事業社)と乖離し、適正な価格といえなくなっている理由として、主に以下の3つが考えられます。

現地調査や工事範囲の確認が十分でない場合がある
原状回復工事の見積を作成するためには、賃貸借契約書や原状回復特約、図面、仕上表などを確認し、現地調査を行ったうえで工事内容を精査する必要があります。
しかし、十分な現地確認が行われないまま概算的な見積が提示されるケースもあります。
その結果、安全側に工事項目や数量が設定され、実際に必要な工事以上の費用が計上される場合があります。
原状回復範囲が広く設定されている場合がある
原状回復工事では、本来であれば部分補修で対応できる箇所についても、全面張替えや全面交換として見積もられるケースがあります。
例えば、
・床材の一部補修で済むケース
・壁紙の部分補修で対応できるケース
・軽微な修繕で復旧できる設備
などが全面更新として計上されることで、退去費用が大きく膨らむことがあります。
また、経年劣化や通常損耗については契約内容によって扱いが異なりますが、本来の負担区分が整理されないまま見積に含まれているケースもあります。
オフィス移転時の原状回復工事、範囲はどこまで?
原状回復工事とは「借りた時の状態に戻すこと」ですが、実際の見積書には本来不要な工事が含まれているケースも少なくありません。原状回復の範囲と注意点を解説します。
指定業者制度により価格比較が難しい
一般的な建築工事であれば複数社から見積を取得できますが、指定業者制度ではそれが難しいケースがあります。
そのため、
・工事項目が妥当か分からない
・市場価格との比較ができない
・見積金額の適正性を判断しにくい
という課題が生じます。
特に原状回復費用が数百万円から数千万円規模になる場合は、見積内容を十分に確認することが重要です。
原状回復費用は見積チェックと適正査定が重要

原状回復費用は、オフィス退去時に発生するコストの中でも大きな割合を占めます。
そのため、指定業者から提示された見積書をそのまま受け入れるのではなく、自社が負担すべき工事範囲や費用の妥当性を確認することが重要です。
見積内容を精査することで、本来負担する必要のない工事項目や、見直しが可能な工事範囲が見つかることもあります。
オフィス退去時には、まず賃貸借契約書や原状回復特約を確認し、自社が負担すべき範囲を整理しましょう。
そのうえで見積内容に疑問がある場合は、建築・設備・不動産・法務などの専門知識を持つ専門家へ相談し、適正査定を活用することをおすすめします。
原状回復工事は発注後では見直しが難しくなります。
提示された見積書に少しでも疑問を感じた場合は、契約内容や工事範囲を確認し、適正な退去費用で原状回復工事を実施できるよう事前に見積チェックを行うことが大切です。
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投稿者プロフィール

- 理事
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【協会会員】株式会社スリーエー・コーポレーション 代表取締役CEO
・ワークプレイスストラテジスト
・ファシリティプロジェクトマネージャー
オフィス移転アドバイザーとしての実績は、600社を超える。原状回復・B工事の問題点を日経セミナーで講演をする。日々、オフィス・店舗統廃合の相談を受けている。オフィス移転業界では、「ミスター原状回復」と呼ばれている。
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