FAQ:原状回復(敷金・保証金)に関するTOP5 ー オフィス・店舗編 ー

2024.02.28

FAQ【オフィス・店舗編】原状回復(敷金・保証金)に関するTOP5

 

 

Q1: 原状回復見積もりが提示されず、突然敷金精算書が送られてきました。その場合、どうしたらいいですか?

中小規模のビルオーナーは、空室率が20%を超える状況下で財務的な損失を被っています。コロナ禍を経験し、テレワークを取り入れたビジネスパーソンの価値観やワークライフバランスが変化したこともあり、ビルオーナーはテナントが選びやすいように物件を改修する動きを見せています。このような背景の下、改修工事費用を賄うために敷金の扱いに問題が生じることがあります。

 

改正民法では、ビルオーナーはテナントに対して原状回復に関する範囲、工事内容、費用を明確に説明し、理解を得ることが義務付けられています。そのため、原状回復見積もりがなされずに敷金精算書が送付された場合、これは違法行為に該当します。テナントは、このような状況に直面した際は、原状回復見積もりの作成が可能な専門家に速やかに相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。

 

 

Q2: 家賃の支払いが2ヶ月滞納しており、「賃貸借契約書に基づき原状回復は賃貸人側がすべて行います。従って原状回復説明書に捺印をお願いします」と言われました。そして明け渡し期日になってから敷金精算書が提示され、敷金では原状回復費用が足りず困っています。しかも納得できません!

賃貸借契約においては、賃料の2ヶ月分の滞納が契約解除の条件とされることがあります。しかし、コロナウイルス感染症の分類が5類へ変更された現在でも、経済活動はコロナ前の水準には回復していません。補助金の打ち切りや、無利息・低利の融資の返済開始、特例措置による公租公課(税金や公共料金)の支払い再開など、家賃滞納が増加する社会情勢があります。

 

このような状況下で、家賃の滞納が発生した場合、テナントはビルオーナーに対して事業再生計画を提出し、家賃の支払い計画について誠実に協議を行うべきです。コロナ禍は特別な事態であり、最近の判例を見ると、数ヶ月の家賃滞納だけでは契約解除が認められにくい傾向にあります。そのため、家賃の弁済計画をビルオーナーに提出することが重要です。

 

ただし、ビル側から「賃貸契約書に記載されている通り、契約解除の対象となります」と通告された場合や、「敷金で原状回復をやっておきますから、明渡しに伴う原状回復合意書に捺印をお願いします」と言われた場合には、注意が必要です。この原状回復合意書に捺印することは、敷金の返還を受けられなくなるだけでなく、テナントとしての権利を放棄した証になります。そのため、絶対に捺印しないことが賢明です。

 

 

Q3: 原状回復工事費用を敷金から差し引いて支払うよう管理会社にお願いしたいのですが、できますか?

ビルオーナーと原状回復工事を行う指定業者が別法人である場合、通常、原状回復工事の依頼主はテナント(借主)となります。そのため、工事開始前に業者からは、工事注文書への捺印と工事費用の支払い確約を求められることがあります。加えて、「原状回復工事が終わりませんと、明け渡し遅延損害金の対象です」と圧力をかけてきます。これは会計処理が複雑になるためです。原状回復の見積もり至急取り寄せ、その費用を敷金より差し引くことを強く要望して下さい。必ず借主の主張は受け入れてくれます。

 

しかし、この過程でのコミュニケーションは慎重かつ具体的である必要があり、可能であれば専門家の助言を仰ぐことが望ましいです。このように適切な手続きを踏むことで、テナントとビルオーナー間の誤解を避け、スムーズな物件の明け渡しを実現できる可能性が高まります。

 

Q4: 敷金償却費として賃料の2カ月分が差し引かれていました。敷金償却費とは何ですか?

敷金の償却に関しては、改正民法の解釈により、その扱いには注意が必要です。賃貸借契約書に敷金の償却が記載されている場合、それは貸主側の法的な根拠となり得ます。通常、敷金(預託金)からは原状回復工事費、解約予告後の家賃や管理費、さらには電気・水道料金などの諸費用が差し引き、敷金精算書が提示されます。しかし、これらの費用を不当に差し引く行為は法的に問題があると思います。

 

専門家への相談を通じて、法的な基準に即した適切な敷金の扱いを求めることが重要です。断固とした拒否の姿勢を示すことで、敷金の不当な償却に対抗することができます。最終的に紛争になって困るのは、貸主と管理会社です。

 

 

Q5: 中途解約したら、敷金より入居時のフリーレント3か月分が差し引かれて返還されたのですが、その理由は何ですか?

定期建物賃貸契約においては、原則として契約期間中の中途解約ができませんが、特定の条件下では中途解約が可能な場合もあります。そのため、契約書に記載された中途解約に関する条項を確認することが重要です。また、契約更新時に初期の契約でフリーレント(賃料無料特約)を受領している場合、契約書にフリーレントの返還条件が記載されていることがあります。更新時には、このような条項が再び適用されないよう、契約内容の見直しや、該当する条項の削除を貸主に要求することができます。一般的に、貸主は合理的な要求に対しては承諾することが想定されます。

 

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執筆者紹介

萩原大巳

萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)

一般社団法人RCAA協会 理事
【協会会員】株式会社スリーエー・コーポレーション 代表取締役CEO

  • ワークプレイスストラテジスト
  • ファシリティプロジェクトマネージャー

オフィス移転アドバイザーとしての実績は、600社を超える。原状回復・B工事の問題点を日経セミナーで講演をする。日々、オフィス・店舗統廃合の相談を受けている。オフィス移転業界では、「ミスター原状回復」と呼ばれている。