飲食業界は、参入障壁の低い産業です。コロナ禍以前は9万件の開店と閉店がありました。コロナも5類になり、飲食業界にも春が来ると思われましたが、現実は違いました。コロナ禍で飲食スタイルが変わり、価値観も変化しました。XYZ世代は健康志向であり、「ソバーキュリアス*」が増えています。日本のビーガン人口は540万人、ベジタリアンは720万人にも上ります。これは無視できない数字です。2023年の閉店数は約8万店、開店数は6万店となる予測です。
しかし、地域1番店はインバウンドを取り込み、巣ごもりを経験した常連客が知人を誘って来店しています。原材料の高騰にもかかわらず、適正価格まで値上げしても来客数は増え、料理の品質とサービス力を向上させ、客単価も上げることで善循環に入っています。
このコラムでは「飲食業界の目指すべき(ミチシルベ)シリーズ」として、10年後の生存率10%を大幅に改善し、10年後も繁盛店を目指すことについてのコラムです。今回は、店舗の初期費用について詳しく解説します。
*ソバーキュリアス(Sober Curious)とは、お酒を飲める人があえて飲まないこと、あるいは少量しか飲まないことを意味する言葉です。
店舗物件の初期費用
保証金(敷金)
- 店舗物件を賃貸する際に必要な敷金は、一般的に賃料の6~15カ月分です。
- 立地が良い、ビルのグレードが高いほど高額となります。
- 退去時に原状回復費用はグレードの高いビルほど高額となります。
礼金
改正民法では礼金も預託金(敷金)と定めています。礼金なしを協議してください。
前家賃
賃貸借契約締結後、賃料を前払いするという契約です。フリーレント3か月を協議し、勝ち取りましょう。
仲介手数料
宅建業法に基づき、賃料の1カ月分が基準です。
保証会社委託料
- 賃料の6カ月上限の保証となっているケースが多いです。
- 保証会社は、賃料の滞納があった場合に代わりに支払いを行います。
- 費用は月の賃料の1か月程度が一般的です。
各種保険料
- 特に飲食店の場合、火災保険への加入が必須となることが多いです。
- 破損や盗難に関する保険への加入も考慮すべきです。
広告料
- 物件の共有スペースに看板などを出す場合、広告料が必要になることがあります。
- 金額は物件によって異なります。
造作譲渡料
- 内装設備が残っている居抜き物件の場合、原状回復義務を引き継ぐため無償譲渡で協議してください。
- スケルトン物件の場合は必要ありません。
これらの初期費用は、店舗を開業する際の大きな負担となるため、事前にしっかりと計算し、事業計画を立てることが重要です。
店舗運営にかかる費用
店舗運営には、家賃、水道光熱費、人件費、仕入れ費用、通信費・消耗品費、宣伝費、車両維持費、保険料など、様々なランニングコストが発生します。
家賃
- 物件の家賃は店舗運営において避けられない固定費用です。
- 家賃の決定には立地や店舗の広さも重要な要素です。
- 一般的に、家賃(管理費を含む)は売上の約10%以下を目安に設定されます。
水道光熱費
- 業態によって水道、電気、ガスの使用量が異なります。
- 飲食店では調理や食器洗浄により水道光熱費が高くなる傾向にあります。
- 売上の約5~7%を水道光熱費とすることが一般的です。
人件費
- 従業員の数に応じて人件費は変動します。
- 人件費は店舗運営コストの中でも大きな割合を占め、売上の30%を目安に設定されます。
仕入れ費用
- 仕入れ費用は、目標売上に応じて変わります。
- 仕入れた商品が円滑に販売できるように計画的に行う必要があります。
- 売上の約30%を仕入れ費用とすることが一般的です。
通信費・消耗品費
- 電話やインターネットなどの通信費や、梱包材、文房具などの消耗品費用も考慮する必要があります。
- これらの費用は売上の約5%を目標に設定します。
宣伝費
- DM、チラシ、Web広告などの宣伝費も重要な運営コストです。
- 宣伝費は売上の約3%を目安に設定し、効果的な方法に集中することが重要です。
車両維持費
仕入れや配達に車両を使用する場合、ガソリン代、駐車場代、メンテナンス費用が発生します。
保険料
店舗によって必要な保険は異なりますが、運営に伴うランニングコストの一部です。
これらの運営費用は、店舗の業態や規模に応じて変わるため、事業計画を立てる際にはこれらのコストを詳細に計算し、適切に管理することが重要です。上記の1~8は、売上の85%を占めます。人気商品を開発し、すべてのコストを売上の60%が原価になるようにすることで、適正価格まで値上げできる魅力的なお店を目指してください。
賃貸契約以外に必要なもの
賃貸契約を結んだ後でも、内外装工事費などの追加費用が発生することがあります。これらは店舗の規模や営業内容によって異なりますが、初期費用の中で大きな割合を占めることがあります。
店舗物件を探す際の注意点
店舗物件を探す際には、立地や面積、駐車場の有無など、多くの条件を考慮する必要があります。これらの条件がビジネスの成功に大きく影響するため、慎重に選ぶことが重要です。
初期費用を抑えるポイント
初期費用を抑えるためには、敷金の協議、賃料の交渉、内装設備改修費の交渉力と専門知識で大幅な減額が可能です。
敷金・礼金の抑制
敷金(保証金)が低い物件を選ぶ、礼金が不要の物件を探す。特にフリーレントの協議は重要です。
賃料の交渉
- 賃料の交渉を通じて、月額のコストを下げることも初期費用削減の一つの方法です。
- 賃料が下がると、それに基づいて計算される他の費用も減少する可能性があります。
- 交渉時には、「適正賃料・査定書」基準に粘り強く交渉してください。
内装設備改修費の交渉
- 物件を下見した際に、トイレや空調などの設備が既に備え付けられている場合、これらの経年劣化している部分について貸主や不動産業者に改修費用を交渉してください。
- 交渉により、それらの費用を減額もしくはオーナー負担として協議してください。
- また、信頼のおけるコンサルタントに依頼し、相見積もりを取り、価格交渉を行ってください。
これらのポイントを把握し、適切に対策を講じることで、店舗開業時の初期費用を効果的に抑えることができます。特に賃料の交渉や内装設備改修に関する交渉は、初期費用を大きく節約するための重要項目です。
ランニングコストの計算
店舗運営のランニングコストは事前に計算しておくことが重要です。これには、損益分岐点を理解し、営業利益4割を目指してください。
コスト削減の方法
ランニングコストを抑える方法として、固定費の削減、業務効率の改善、助成金・補助金の利用が効果的です。特に販管費、決済方法のミエルカにはDXは必修です。
店舗開業には様々なコストが伴いますが、これらを理解し適切に管理することで、成功への道が開けます。初期費用とランニングコスト削減を実現して、効率的で利益のでる店舗運営を目指しましょう。
FAQ
1. 店舗開業に必要な初期費用はどのくらいですか?
初期費用には保証金、礼金、前家賃、仲介手数料などが含まれ、物件によって異なりますが、かなりの金額が必要になる場合があります。
2. ランニングコストを抑える方法はありますか?
固定費の削減、業務効率の改善、助成金・補助金の利用が効果的です。特にDXはすべてのコストをミエルカしてくれます。DXも補助金対象です。
3. 店舗物件の選定で特に重要な点は何ですか?
立地、面積、駐車場の有無など、ビジネスに合った条件を慎重に選ぶことが重要です。
4. 初期費用を抑えるためにはどのような交渉が有効ですか?
賃料の交渉や内装設備改修費の交渉が最重要項目です。
5. 店舗運営における損益分岐点とは何ですか?
損益分岐点は、売上がランニングコストと等しくなる点で、これを超えると利益が生まれます。
専門家紹介
どんなことでもお気軽にご相談ください。私たちが対応させていただきます。
物件紹介・施工管理(元請管理者)
上田 一成(うえだ かずなり) 株式会社MUGENSHA 1995年独立創業、1997年株式会社MUGENSHAを設立し代表取締役に就任。 商業建築に特化し、飲食店やクリニック、物販店、エステサロン、保育園、ホテル、式場、斎場等のストアチェーンの施工から始まり、デザイン設計、再生やプロデュース、出店計画、マネジメント等も得意とし業界約30年の経験を誇る。 現在、土地・建物の有効活用から売買時の建物価値を高める付加価値創出に取組んだ資産サポートを幅広く手がける建築トータルプランナーとして活躍中。 |
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デザイン設計
小川 友幸(おがわ ともゆき) 株式会社オガワライフデザイン 建築設計監理業務に従事し30年を超えるキャリアにおいてオフィスビル、社会福祉施設、環境関連施設、商業施設、住宅等 多用途において官・民双方の事業について企画・設計・監理の中で クライアント・施工者のとりまとめを得意とする。また、原状回復に伴う適正評価、大規模修繕計画並びに設計、耐震診断・補強設計に伴う改修設計のコンサルティングする。資産除去債務原状回復適正査定の建築エキスパ-トである。 |
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原状回復・B工事査定員
堀田 猛(ほった たけし) 株式会社スリーエー・コーポレーション 執行役員 商業施設の企画・誘致・設計・施工に数多く携わり、商業施設コンサルタントおよび不動産・建築分野で「皆様のかゆいところに手が届く」をモットーとし活動中。商業施設や賃貸物件の「内装監理室」運営のエキスパートであり、施設側として資産区分(工事区分)の策定をしていた経験から、現在は原状回復・B工事に関しては知り尽くしており、コンサルタントとして多くの実績を生み出している。 |
執筆者コメント:「目指せ!地域ナンバーワン繁盛店」
飲食業界では、一回目の来店のお客様を「ゴシンキさん」、二回目を「ウラヲカエス」と呼びます。三回目は「お馴染みさん」、四回目は「常連さん」となります。大都市の来店者のほとんどは一回目のお客様であり、売上の最大値はオープン後半年から1年です。二度来店するお客様は11%しかいません。この改善が求められています。
一方、地方都市では売上が徐々に伸び、5年から10年で売上の最大値を迎えます。常連さんに支えられた地域の一番店です。経営はお店の価値を理解してくれることであり、ファン作りに経営をフォーカスすることが重要です。
ゴシンキさんにリピートしていただくためには、名前を呼んで笑顔で挨拶するなどが効果的です。三回目には、心地よいサービスとして「お通し」などの一品を提供することも重要です。大手にはない価値を提供するためには、デジタルを活用することが必要です。決済サービスとしては、ペイペイ、カード、ポイントなどさまざまな施策やウツテがあります。
私たちは店舗のDXを始め、立地からデザイン、内装設備、原状回復や工事の適正査定、敷金の返還、賃料査定までワンストップで無料相談を承っています。
執筆者紹介
萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)
一般社団法人RCAA協会 理事
原状回復・B工事適正査定のパイオニア |