かつての栄華は今いかに?東急プラザ銀座の今を徹底レポート!
はじめに
東京・銀座の数寄屋橋交差点は銀座を象徴するエリアです。この交差点の角地には、かつて三井グループのシンボルでもあった東芝の旗艦ビル「東芝TQビル」が建っていました。向かい側にはエンターテインメントの集積地「SONYビル」があり、有楽町駅や阪急デパートと晴海通を挟んで隣接する、日本屈指の一等地です。
B2階からB1階には銀座線や丸ノ内線などの地下鉄が直結し、人気の飲食店が軒を連ねており、JR有楽町駅や阪急デパート、ガード下のショッピングモールに至るまで、夢のような近代都市エリアが広がっていました。
しかし、時代の変遷とともに栄枯盛衰も訪れます。名門東芝の経営難により、TQビルは売却され、東急不動産が三井不動産との競りに勝ち、1,610億円で取得しました。
新たな開発コンセプト「Creative Japan」
東急不動産は、渋谷109の企画・運営を通じて世界中に若者文化を発信してきた実績があります。その経験をもとに、リソースを選択と集中の方針で投入し、資金やノウハウを惜しみなく注ぎ込んで開発したのが「東急プラザ銀座」です。開発コンセプトは「Creative Japan〜世界は、ここから、おもしろくなる。〜」というもので、ここから新たな文化発信を目指しています。
施設のキーテナントには、富裕層の若者をターゲットとする東急百貨店のブランド「HINKA RINKA」や、東急ハンズが提供する高級ライン「HANDS EXPO」があります。また、富裕層の若者が集うナイトクラブ「RAISE(レイズ)」も設けられ、8階と9階には世界のブランドを集めたロッテグループ運営の免税エリアが広がります。10階と11階には、うなぎ、鮨、天麩羅、茶寮、蕎麦、そしてうどんの名店「つるとんたん」など、日本食文化を体験できるレストランが揃い、銘酒を楽しむ演出も施されています。また、屋上には緑豊かなグリーンガーデンとプールがあり、360度のパノラマビューが楽しめます。西には富士山、東には東京湾が望め、夜景は息をのむ美しさです。
庭園では、裕福な男女がグラスを片手に未来の夢を語り合い、まさに21世紀の東京物語の舞台がここ「東急プラザ銀座」にあります。回遊性を重視し、絶景の上階へと誘導することで、来場者にシャンパンタワーのような特別な体験を提供するなど、プロフェッショナルならではの演出が光ります。
東急プラザ銀座の現状とコロナの影響
「東急プラザ銀座」は、話題性も高く、多くの注目を集めながらオープンしました。インバウンド需要が爆発し、中国をはじめ世界中の富裕層が銀座を訪れ、豪華観光バスを貸し切ってブランド品を次々と購入する「爆買い」現象が大きなトレンドとなりました。
しかし、その栄華もつかの間、突如としてコロナパンデミックが発生。インバウンド需要は一気に終息し、国内の富裕層も外出を控え、男女合わせてビジネスパースンの銀座来訪も途絶えました。これにより、東急プラザ銀座は閑散とし、キーテナントである「HINKA RINKA」や「HANDS EXPO」、免税店も次々に撤退。空き店舗が目立つ高級商業施設へと変わり果てました。
コロナが収束した後も来客は戻らず、東急不動産は事業再生を図るため、東急プラザ銀座を三井住友ファイナンスグループに1,185億円で売却し、損失を確定させました。総事業費1,800億円を投じたこのプロジェクトの損切りは、東急不動産と三井住友ファイナンスグループによる再生への新たな挑戦の始まりとなりました。
東急プラザ銀座は、土地と建物を2007年に取得し、キーテナントだった「モザイク銀座阪急」に退去を求めましたが、退去費用や原状回復費用の負担を巡って訴訟に発展。業界関係者によれば、最終的に和解し、東急不動産が60億円以上の移転費用を支払ったとのことです。
裁判や撤去工事、新施設の設計と施工が長期化し、ようやく2016年にオープンするも、2019年10月には武漢市で新型ウイルスの感染が拡大し、再び暗雲が立ち込めました。最終的な総事業費は1,800〜1,900億円に膨らみましたが、売却金額は1,185億円にとどまり、単純計算でも700億円を超える損失を計上する結果となりました。
「熱誠」の心が創る、銀座の新しい集いの場
東急電鉄の実質的な創業者である五島慶太氏の座右の銘は「熱誠」です。信州の青木郷にある村松神社の氏子筆頭豪農の家に生まれ、苦学の末に東京帝国大学に入学する際、故郷を旅立つ前に神社を参拝し、「熱誠」を胸に誓ったとされています。五島氏は「事業も行政も農業も、すべては民のために行うべき」と考え、そのために情熱と誠実さを持って生きることを信条としました。
五島氏の経営哲学は「祈り」と「教育」に重きを置く点にあります。「熱誠」の精神に基づき、社会や人々のために尽力する姿勢を貫いていました。人材の育成にも熱心で、五島育英会を設立し、東京都市大学グループには幼稚園から大学まで約12,000人が在籍しています。
もし五島慶太氏が東急プラザ銀座を訪れたなら、銀座のランドマークとして、老若男女が集う場所になることを望んだのではないでしょうか。まるで、地域の総鎮守の神社を思わせるような場にしたかったに違いありません。訪れる人々がそれぞれの目的に合ったお店を見つけ、価格帯もリーズナブルなものから高級品まで揃っていて、何度も足を運びたくなる。そこでは、価値観を共有する仲間と出会える、銀座の地域の集いの場として愛されることを目指していたでしょう。
コロナ禍が教えた、人と人とのつながりと事業再生の鍵
毎日フレンチのフルコースとボルドー・マルゴーで満たされて、本当に満足できるでしょうか?
また来店したいと思えるでしょうか?
仲間やスタッフに会いに、再び足を運びたくなるでしょうか?
残念ながら、コロナ禍を経て、人と人がつながり、協力し合うことの大切さを私たちは改めて学びました。田舎に行けばそれが日常として見られる光景です。会合の場では「どうも」の一言で通じ合えるものです。Z世代の学生も「ヤバい」の一言で意思疎通ができています。これこそ日本特有の文化であり、街が綺麗で清潔、そして安全で礼儀正しい挨拶が交わされる日本の風景は、世界に誇れるものです。
合理主義、個人主義、グローバリズム、ナショナリズム…聞き飽きるほど聞いてきましたが、共産主義が崩壊し、勝者と敗者を分かつ資本主義も末期を迎えつつあります。
価値観というのは思想の根幹です。そしてその根幹は「温故知新」にあるのです。デジタル化が進む現代は、ストレスフルな社会です。二元論や損得勘定に偏れば、争いが絶えないのも当然です。古代ローマ人は秩序のない争いの世界を「パスクなき世界」と表現しました。
事業再生の基本を、以下にシンプルに解説しています。しかし、現代の価値観が大きく変化した今、基本だけでは再生は難しいでしょう。このコラムが、店舗で働く経営者やスタッフの皆様にとって少しでもヒントになれば幸いです。
東急プラザ銀座の現在地と未来への挑戦 – 再建への道のりを探る
東急プラザ銀座の現状:ガラガラの原因とは?
東急プラザ銀座の現状は、かつての賑わいとは異なり、訪問者数の減少が目立っています。この「ガラガラ」の状況にはいくつかの要因があります。まず、新型コロナウイルスのパンデミックにより観光客が激減し、特にインバウンド需要が大きかった銀座エリアには深刻な影響が及びました。また、消費者の購買行動も大きく変わり、オンラインショッピングの利用が拡大し、リアルな店舗での消費が減少しています。加えて、若者層が銀座に訪れる機会が減少していることも、活気を失う要因の一つです。このような状況の中、施設自体の魅力を再度向上させる必要があります。地域の特性を活かし、新たな体験や価値を提供することで、かつての賑わいを取り戻すことが求められています。
新型コロナウイルスが及ぼした影響と消費行動の変化
新型コロナウイルスの感染拡大は東急プラザ銀座に大きな影響を与えました。旅行制限による訪日観光客の激減は、銀座エリア全体の来訪者数を著しく減少させ、施設内の賑わいも失われました。また、リモートワークの普及による都心への来訪頻度の低下も影響し、かつての賑わいを取り戻すには至っていません。消費者行動にも変化が見られ、オンラインショッピングの利用が急増する中で、実店舗の魅力をどのように再構築するかが、東急プラザ銀座の再建における重要な課題となっています。
施設再建に向けた戦略:イベントとテナントミックスの見直し
東急プラザ銀座の再建に向けた戦略の一環として、施設内でのイベントの充実とテナントミックスの見直しが行われています。具体的には、銀座という特別な地域性を活かした文化イベントや季節行事を開催し、地域住民や観光客の興味を引き戻そうとしています。また、これまでの高級ブランド中心のテナント構成を見直し、若者向けのカジュアルブランドや体験型店舗を導入することで、多様な消費者層にアピールし、再び賑わいを取り戻すことを目指しています。このような取り組みによって、新たな顧客層を獲得し、施設の再生を図ることが期待されています。
デジタル技術の導入による新たな顧客体験
東急プラザ銀座は、デジタル技術を活用して新たな顧客体験の提供を進めています。具体的には、スマートフォンを利用した購買体験の向上を図ることで、来店者に利便性を提供しています。例えば、店内のデジタルサイネージやアプリを活用して、来店客に向けたリアルタイムの情報提供や特典の案内を行うことで、訪問の価値を高めています。また、オンラインイベントやバーチャルショッピング体験など、デジタルを介した新しい形のエンゲージメントも導入し、物理的な来店だけでなく、遠隔でも銀座の魅力を感じられる取り組みを行っています。これにより、消費者に対して新しい体験価値を提供し、施設全体の魅力を高めることを目指しています。
地域社会と連携した未来の銀座
地域社会との連携は、東急プラザ銀座の未来を築く上で非常に重要です。銀座は観光地であるだけでなく、地域住民にとっても魅力的なエリアであることが求められます。そのため、地元の文化やコミュニティとの結びつきを強化するイベントや取り組みを進めることが必要です。例えば、地域の商店や文化施設と連携したフェアやワークショップを開催することで、地域の魅力を再発見できる機会を提供します。このような地域との協力が、銀座の再活性化に貢献すると期待されています。
今後の展望:再び賑わいを取り戻すために
再び銀座の賑わいを取り戻すためには、多様な戦略の実行が求められています。まず、地域社会との連携が重要であり、地元の商店や文化施設と協力したイベント開催が、地域住民と観光客の双方に魅力を感じさせるポイントとなります。次に、施設内での体験型のサービスやインタラクティブな要素を増やし、訪問者に「銀座ならでは」の特別な体験を提供することが不可欠です。また、デジタル技術の活用による利便性向上や、SNSを通じたプロモーション活動も、新たな客層を取り込むための鍵となります。
おわりに
パンデミックスは第三次世界大戦だった
国境を越えたコロナウイルスと人類の戦いは、まさに第三次世界大戦でした。コロナ禍はデジタルシフトを加速させ、ライフワークスタイルを激変させ、人間の価値観までも変えました。
我国も解散総選挙において、岩盤の組織票を持つ政権与党が大きく過半数割れの惨敗を喫しました。批判ばかりの野党ではなく、実現可能な政策提言をする野党が政局の鍵を握りつつあります。来年の参院選で同じ現象が起これば、確実に日本は変わるでしょう。これこそ戦後レジームからの脱却です。
30年前 | 今 | |
所得の中央値 | 550万円 | 372万円 |
消費税 | 3% | 10% |
ドル円 | 102円 | 150円 |
社会保険料(一カ月) | 3.5万円 | 6.7万円 |
失われた30年、日本の衰退は凄まじいものでした。政治の究極の目的は、国民の命と財産を守ること、そして国民を豊かにし、強く自立できる人を育てること。この二項に要約できます。
補助金は手間も時間もコストもかかり、金権政治家や行政官の権限を強めます。マイナンバーカードと所得、社会保障、銀行口座を連動させれば、わずか一月で経済状況を把握でき、ピンポイントで弱者を救済することが可能です。
注意すべきは、AmazonやGoogleのクラウドビッグデータを活用する際、日本のデータは日本国内に設置することを義務づけ、ビッグデータを管理・コントロールできる仕組みを整備することです。また、データベースの一部を民間に活用・公開できる仕組みを創れば、新たなサービスや事業が生まれるでしょう。
経済アナリストは、デフレからコストプッシュ型インフレへと変わり、需要不足と言い続けていますが、本当にそうでしょうか?
建設の公共事業を増やしても、現場で働く技能工が足りません。幸齢化(高齢化)社会の実現のため、特別老人ホームを造っても、働いてくれるヘルパーがいません。ソーシャルワーカーも猛烈な人手不足です。すべての産業で現場は猛烈な人手不足です。一方で、ホワイトカラーはDXによる人工知能で七割が失業となり、営業職やコンサルタントもアシスタントは不要になります。ボス的コンダクターの仕事をするコンサルタントはますます希少価値が高まるでしょう。
不動産においても、立地の良いデザイン性の優れた商業施設が衰退しているのも時代の流れです。もはやテナントの繁栄なくしては、商業施設も維持できません。カレッタ汐留、代官山ショッピングモール、五反田TOCビルなど、維持不可能な商業施設ばかりです。これを受けて、中野再開発の目玉である中野サンプラザ再開発も大幅に延期。その上、デベロッパーのヒューリックは再開発から撤退し、次は住友も抜けるとの噂です。
好立地で資金力、人財力、情報力すべてに優れている大手デベロッパーが手がける高級商業施設でも、軒並み業績を落としています。米欧では凄まじい経済の二極化が進んでおり、安い労働力を求め移民政策を推進した結果、国は分断され、治安悪化や社会保障費の激増で建国以来の危機に瀕しています。我国においては、治安も良く、街にはゴミもなく清潔で、親切な国民性が維持されています。飲食店においても親切でおもてなしの心は失われていません。海外と違い、ぼったくりは皆無です。
大手デベロッパーもそろそろ、一人勝ちを目指す時代は終焉し、地域の特性を活かした共生繁栄を第一に考える時代の始まりです。ランドマークとは、低所得者も富裕層も老若男女すべてが笑顔で集いたくなる場を提供することです。それは日本にしかできない新たな時代の始まりです。
日本が世界から人気の観光地として選ばれる理由は、アニメばかりではありません。アニミズムの根底には自然、花鳥風月を敬う精神があります。その遺伝子の記憶が、安心・安全・清潔・親切な国民性を造りました。
21世紀の東京100景を創造する。
江戸は幕藩体制による連合国家を創りました。世界一の大都市・江戸は杜と水運、砂洲を公共事業で大地に造り替え、丘に登れば西に富士、東に大川の汽水、北に筑波山、南に東海道神奈川が広がります。丘の杜には天海聖人が描いた陰陽道による神社仏閣が江戸城を中心に造られています。神社仏閣からの景色は江戸36景を創り、江戸郊外まで含め江戸100景を創り上げました。
神社仏閣には杜の緑と清らかな水、天照の太陽と空、豊穣の大地が一望できるパノラマが広がっていました。まさに地域に根ざしたランドマークです。百花繚乱により庶民が脚光を浴び、花鳥風月を愛でる日本文化が円熟期を迎えます。若者の代表が歌川広重、伊藤若沖、与謝野蕪村であり、老熟の代表が伊能忠敬、松尾芭蕉、葛飾北斎です。
江戸文化は庶民の旅行人気を誘い、お伊勢参り、金比羅参り、富士山浅間神社詣は大人気でした。旅行人気は東海道膝栗毛、東海道五十三次、奥の細道など、江戸庶民文化を造りました。
参考文献: 小池 満紀子, 池田 芙美(2017)「広重TOKYO 名所江戸百景」講談社
21世紀のランドマークは、日本橋・浅草・銀座から変わり、明治神宮を中心に表参道・渋谷スクランブル交差点、明治通りは渋谷駅から外苑の地域が注目されるようになりました。
表参道・渋谷・外苑エリアには平日でも130万人を超える人が訪れます。しかし、残念なことにどこの複合商業施設ビルを見ても、一階二階には世界のブランド(エルメス、ルイ・ヴィトン、シャネル、セリーヌ等)が並び、最近では健康志向もあり、スポーツメーカー(ナイキ、アディダス等)が目立ちます。これでは差別化どころか競争激化により、商業施設運営会社もテナントも衰退していきます。
原宿駅や渋谷駅、地下鉄には驚くほど多くの人がいます。そろそろ大手デベロッパーも囲い込み一番戦略からオープン共栄戦略に大転換する時期です。百花繚乱とは「オープン戦略で自由度が高い」を意味します。経済的に貧しい人も豊かな人も、老若男女が集う街を目指すべきです。
囲い込み戦略の弊害は後を絶ちません。旧同潤会アパートは再開発を経て表参道ヒルズに変わりましたが、一階の目玉テナント区画に伴うエントランス扉(観音扉)の建築品質に満足せず、テナントVS大手デベロッパー森ビル・大林組が裁判中です。オープンから二年間空室が続き、その損失額は月/2,000万円の家賃とすれば、あまりにも大きな損害金です。
東急プラザ銀座、表参道ヒルズともに、囲い込み戦略によるトラブルが発生しています。本当に残念なことです。
萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)
一般社団法人RCAA協会 理事
オフィス移転アドバイザーとしての実績は、600社を超える。原状回復・B工事の問題点を日経セミナーで講演をする。日々、オフィス・店舗統廃合の相談を受けている。オフィス移転業界では、「ミスター原状回復」と呼ばれている。 |