病める大国USA トランプ氏銃撃で世論は激変した
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大国アメリカの今をニューヨークシティからレポート
ペンシルバニアの青空の下、星条旗がはためく中、シークレットサービスをかき分け血を流しながら拳を突き上げ「Fight」と叫ぶ不撓不屈のトランプ氏の姿。この映像は瞬時に全世界に広まりました。私の脳裏に蘇ったのは、硫黄島の丘で星条旗が掲げられた瞬間でした。
一方、バイデン大統領のスピーチは「選挙による民主主義が正義」と訴えるも、政治家としての瞬発力の差が鮮明になりました。バイデン大統領には「銃は要らない」と力強く訴えるリーダーであってほしかったです。
トランプ氏は「神に選ばれし強い大統領」として神格化され、セオドア・ローズベルトやロナルド・レーガンを超える存在になるとの声もあります。SNS上では「トランプはセオドア・ローズベルトを超える」とのツイートも見受けられました。
日本でも「ヤバイデン撤退やむなし」「ハリス黒船沈没」といった声が上がり、岸田総理への不満も臨界点に達しています。世界の世論は変わりつつあり、今こそ日本には逆潮に漕ぎ出すリーダーが求められています。
病める民主主義と断末魔の資本主義の未来は?
民主主義の理念は、絶対多数の幸福を追求することにあります。幸福追求のために教育と資本主義が存在していました。しかし、世界は新自由主義によるグローバル金融資本主義によって経済も政治も歪められました。その結果、わずか1割のエスタブリシュメントが富の6割を保有する社会構造が生まれました。
アメリカでは、わずか8名の大富豪が全世界人口の半分と同等の資産をコントロールしています。この8名には、ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツ、イーロン・マスクといった名だたる人物が含まれています。
大富豪を支える思想はグローバリズムであり、これを可能にしたのはテクノロジーと、それを基盤とするビッグテック企業です。しかし、反グローバリズムや反移民の動きが草の根保守の団結を生み、政治に大きな影響を与えています。この対立が顕著に現れているのが、世界一の国際経済都市ニューヨークシティです。今回は、ニューヨークシティの驚くべき現状を不動産賃貸の視点からレポートします。
NYC家賃と物価の急騰で住めない街に!人口45万人減少、移民20万人増加
ニューヨーク市は家賃と物価の高騰により人口が減少しています。市長はこの問題に対処するため、建築基準法の緩和政策を発表し、10年間で50万戸のコンパクトで安価な住宅を供給する計画です。この政策は、一時避難所にいる66,000人のホームレスや地下鉄などで生活する20,000人のホームレスの住居を確保し、治安の悪化防止と街の清掃を目指しています。ニューヨークの人口はコロナ前の875万人から2024年2月には850万人に減少しました。
ニューヨーク市の人種構成は、白人31%、ヒスパニック30%、黒人21%、アジア系13%、ユダヤ系5%です。ウォール街やマスメディア、医師、弁護士、高等教育機関の教授、芸術家など、ユダヤ系が多く活躍しています。毎年4,800万人以上の観光客が訪れ、高等教育機関には70万人の学生が在籍しており、そのうち35%は留学生です。
ニューヨークはアメリカンドリームを求めて世界中から若い頭脳が集まる国際都市ですが、家賃と物価が高いため、留学生にとっては厳しい生活環境です。それでも優秀な学生には奨学金が支給され、勉強に集中できる環境が整っています。
一方で人手不足も顕在化しており、ウェイターの時給は$20(約3,100円)、熟練の調理師は$40と高額です。シェフにお任せドットコムを運営する青木恵子さんは、ベニハナ・オブ・TOKYOのCEOも兼務し、世界の国際都市に出店していますが、東京では閉店が相次いでいます。青木さんは、日本のスタッフが海外で働く意欲を持たないことを嘆いています。
ニューヨークは治安の悪い面もありますが、同時に多くのチャンスがある華やかな都市です。『セックス・アンド・ザ・シティ』はキャリアと女性の幸せを求めるアラサーのキャリアウーマンを描いたドラマで大ヒットし、2022年のリメイク版も成功しています。毎週金曜と土曜には、緑豊かなガーデンハウスでパーティが開かれ、シェフ、ウェイター、ウェイトレス、コンシェルジュが接客する華やかなダイバーシティの現実が見られます。
ニューヨーク市では10人に1人が年収1億5,500万円以上のミリオネアで、人生を謳歌しています。
NYCで成功するために知っておきたい!ビルの種類と賃貸事情
ニューヨーク市(NYC)の持家比率は3割を切り、7割以上の人が賃貸に住んでいます。NYCで家を持つことはステータスであり、以下の4種類のビルがあります。
1. コンドミニアム(分譲マンション)
- 投資家比率が決まっており、10%から50%購入できます。
- 法人で購入するには制限が厳しく、購入希望者はバックグラウンド調査と管理組合の面接が必要です。
- 賃貸に出す場合、相場より安く出すと管理組合から注意を受けることがあります。
- 調査費用は約2,000ドルです。
2. レンタルビル
- 企業が所有し賃貸に出しているビルです。
- 使用者や使用目的の調査が行われ、預託金(デポジット)や家賃は公開されています。
- 値引き交渉は難しく、信頼できるエージェントに依頼するのがベストです。
3. Coop(共同所有)
- NYCの住宅の7割を占め、購入価格は市場価格より15%〜20%安いです。
- ボードメンバーが絶対的な権限を持ち、特定の宗教や人種のみに限定されることがあります。
- 賃貸に出す場合もボードメンバーの承諾が必要で、価格を安く設定することはできません。
- 有名人でも購入を拒否されることがあります。
4. レントスタビライズ(賃料安定)
- 法人契約は不可能で、入居者のバックグラウンドが徹底的に調査されます。
- 元々は借主保護のために法制化されたもので、不当な家賃上昇を防ぐ目的があります。
- 多くの物件は毎年更新され、解約は難しいです。
- 家具や家電がセットになっている物件では、原状回復費用が高額になることがあります。
- 毎年家賃は3%から5%上昇し、用途変更やリニューアルが目的で更新されます。
NYCでの賃貸契約は複雑で、信頼できるエージェントに依頼することをお勧めします。
ニューヨークの魅力と挑戦
ビル一棟の購入や投資、賃貸は、すべて信頼できるエージェントに依頼することをお勧めします。調査費用、家賃支払い保証の保険、エージェントの手数料、入居者の個人保証など、高額な費用がかかり、審査や申込資料も多く必要です。さらに、借りるためには月の家賃の40倍から50倍の年収証明が必要です。
ニューヨークは常に供給不足で貸主が優位な市場ですが、それでも世界中から優秀な若者や成功者が集まる国際都市です。
日本ほど外資や外国人が自由に不動産を売買、賃貸できる国は他にありません。原状回復費用もオーナー次第で高額になることがあり、家賃も毎年値上がりします。管理も日本ほど親切ではありません。
ニューヨークは自由と規制が共存する都市で、この対立が不動産市場にも現れています。しかし、情熱と行動力、実力があれば、アカデミアの人脈を活用したり、企画をキーパーソンに提案したり、手紙をCEOに送ったり、SNSでメッセージを送ったり、エレベーターピッチまでやります。多様な方法で成功を掴むチャンスがあります。
YouTubeやSNSでルームツアーや高級コンドミニアムの案内ツアーを企画・運営し、カリスマビジネスパーソンになることも可能です。突破力があれば、ニューヨークは無限のチャンスを提供する都市です。
参考資料:ニューヨークの間取り
- スタジオ:38m²から48m²
アルコブスタジオとは、間仕切りを設置して1ベットルームに変更可能
- 1ベッドルーム(日本の場合は1LDK):48m²から74m²
ジュニア、フォーとは、2ベットルームに変更可能(55㎡~98㎡)
- 2ベッドルーム(日本の場合は2LDK、バスルーム2つ):74m²から120m²
- タウンハウス:大型庭付き戸建て
レントはほとんどなく、アッパーイーストサイドのタウンハウスは、5億円以下はないでしょう。
ドアマンやセキュリティの有無も重要なポイントです。情熱と実力があれば、ニューヨークでの生活は無限の可能性を秘めています。
ニューヨークの地下鉄運賃値上げ:移動の現実
昨年8月、ニューヨークの地下鉄運賃が$2.75から$2.90に値上がりしました。距離に関係なく均一料金のため、長距離移動にはお得ですが、一駅の短距離移動でも$2.90(約450円)かかることになり、気軽に利用することが難しくなりました。この値上げは、多くのニューヨーカーにとって日常の負担を増やしています。
特に、低所得者層や頻繁に利用する通勤者にとっては大きな影響があります。地下鉄はニューヨーク市内の主要な交通手段であり、その利用料金が上がることで、他の生活費とのバランスを取るのが難しくなります。さらに、運賃値上げによる収益増加がどれほどサービス改善に繋がるのかも注目されています。地下鉄の利便性を維持しつつ、誰もが利用しやすい料金体系を求める声が高まっています。
マンハッタンの家賃がさらに高騰
ニューヨーク市マンハッタンの賃貸物件の家賃が過去最高を更新しました。2023年7月、マンハッタンの平均家賃は月額$5,588(約87万円)に達し、特にスタジオタイプは$3,200(約50万円)、ワンベッドルームは$4,295(約67万円)、ツーベッドルームは$5,200(約81万円)となっています。高級物件では、これらの価格の倍以上になることも珍しくありません。この家賃高騰の背景には、住宅ローン金利の上昇があり、多くの人々が物件購入を控え、賃貸市場に流れ込んでいます。さらに、パンデミック後にニューヨークに戻ってくる人々も増加し、需要が供給を上回っている状況です。こうした状況から、マンハッタンでの生活は一層厳しくなっており、家賃の高騰が今後も続くことが予想されています。
家賃の歴史「驚くべき上昇」
1980年にニューヨークに移り住んだ人が、当時グリニッジビレッジで借りた1ベッドルームのアパートは月800ドル(約124,000円)でした。しかし、現在では同じエリアで月4,000ドル(約620,000円)以下で借りることは困難です。この42年間で家賃は5倍以上に値上がりしました。
家賃高騰の原因と賃貸需要の増加
ニューヨーク市の家賃が高騰している原因は多岐にわたりますが、最も顕著な要因はアメリカの住宅ローン金利の上昇です。2023年8月末時点で、30年固定住宅ローンの金利は7%を超え、これは21年ぶりの高水準となっています。これにより、住宅購入が経済的に困難になり、多くの人々が不動産の購入を見送り、賃貸にシフトしています。結果として賃貸市場への需要が急増し、家賃が上昇しています。
また、ニューヨーク市内での賃貸物件の供給が常に不足していることも、家賃高騰の一因です。特にマンハッタンでは、条件の良い物件が市場に出るとすぐに借り手が見つかる状況です。
パンデミック後の状況も家賃に影響を与えています。2020年春に新型コロナウイルスの感染が拡大した際、多くの人々が高額な家賃を嫌ってマンハッタンを離れましたが、最近になって再び人々が戻り始めています。特にリモートワークが定着し、広めの住居を求める人々が増えたため、賃貸需要が再び上昇しています。これにより、マンハッタン内での物件の競争が激化し、家賃がさらに上昇しています。
住宅供給が限られている中での需要増加は、価格上昇を招く典型的な経済現象です。ニューヨーク市のような大都市では、土地の供給が物理的に制限されているため、新しい住宅の建設が容易ではありません。これに加えて、都市の魅力や利便性が高いため、国内外からの移住者が後を絶たないことも、家賃高騰の一因となっています。
さらに、インフラの発展や地域の再開発プロジェクトも家賃に影響を与えています。新しい公共交通機関の整備や商業施設の開発は、地域の魅力を高める一方で、不動産価値を押し上げ、結果的に家賃の上昇を招いています。
総じて、ニューヨーク市の家賃高騰は、多くの要因が複雑に絡み合った結果であり、今後もこの傾向が続くと予想されます。
パンデミック後のニューヨーク「人々が戻ってきた理由」
パンデミックの影響で一時は約40万人が減少したニューヨークの人口ですが、最近になって再び人々が戻り始めています。その理由の一つは、ニューヨークの交通の便の良さです。車がなくても生活できる数少ない都市として、地下鉄やバスなどの公共交通機関が充実しているため、多くの人々が便利さを再認識しました。
また、文化やエンターテインメントが豊富で、多様な食文化やショッピング、アートシーンが人々を引きつけています。オフィスの再開も進み、リモートワークからオフィス勤務への移行が進む中、仕事のためにニューヨークに戻る人も増えています。さらに、不動産価格の上昇や住宅ローンの高騰で購入を控える人が増え、賃貸需要が高まっていることも背景にあります。ニューヨークの持つ独特の魅力と利便性が、人々を再びこの街へ引き寄せているのです。
アッパーウエストサイド「魅力的なエリアと高級物件」
マンハッタン内で特に人気のエリアであるアッパーウエストサイドは、その魅力的な生活環境で知られています。リンカーンセンターや自然史博物館などの文化施設が豊富で、住民にとっては芸術と学びの場が身近にあります。また、このエリアには高層ビルとタウンハウスが混在し、幅広い住居オプションが提供されています。買い物や外食が徒歩圏内にある利便性、リバーサイドパークやセントラルパークのような広大な公園へのアクセスの良さが、多くの人々を引きつけています。治安が良く、緑豊かな環境が揃っているため、家族連れにも人気です。さらに、高級マンション「ダコタ・ハウス」のような著名な建物もあり、豪華な設備と洗練された生活を求める人々に支持されています。このエリアの不動産は非常に競争が激しく、魅力的な物件はすぐに借り手が見つかるのが現状です。全てが徒歩圏内に揃うアッパーウエストサイドは、快適で便利な都市生活を提供します。
学生需要と裕福な家庭
ニューヨークの賃貸市場は、名門大学に通う学生の需要によっても支えられています。コロンビア大学やニューヨーク大学などの一流大学が位置するマンハッタンは、学生やその親にとって魅力的な場所です。裕福な家庭は、子供に寮生活をさせる代わりに、快適なアパートを借りることが一般的です。これにより、学生が学業に集中できるだけでなく、家族がニューヨークを訪れる際の滞在先としても利用できます。このような家庭は高額な家賃を支払う余裕があり、マンハッタンの高級物件の需要を高めています。特に、プライベートスペースやホームオフィスが確保できる広めの物件が人気です。この学生需要は、ニューヨークの不動産市場に安定した収入源を提供し、地域経済の活性化にも寄与しています。また、裕福な家庭が住むことで周辺のサービスや施設も充実し、さらに魅力的なエリアとなっています。
ニューヨークで広がるシェア文化
ニューヨークでは家賃の高騰に伴い、シェア文化が急速に広がっています。従来、ルームシェアは学生や若年層に一般的でしたが、現在は社会人の間でも普及しています。特に、広めの2ベッドルームや3ベッドルームのアパートメントを共同で借りることで、家賃の負担を分散し、経済的な安定を図る人々が増えています。各ベッドルームに専用のバスルームが付いている物件も多く、プライバシーを保ちながら共同生活を送ることが可能です。このシェア文化の広がりは、ニューヨークの生活費の高さに対する一つの解決策として、多くの人々に支持されています。また、シェア生活は、新しい人間関係やコミュニティを築く機会にもなっており、都市生活に新たな価値観をもたらしています。こうした背景から、シェア文化は今後もますます広がっていくことが予想されます。
レントコントロールと住民の権利「ニューヨークの現状」
ニューヨーク市の住宅事情において、「レントコントロール」は長年にわたり住民の生活を支えてきた重要な制度です。この制度は、家賃の急激な上昇を防ぎ、特に長期間にわたって同じ場所に住む住民にとって、経済的な安定をもたらします。レントコントロール対象のアパートでは、家主は年に一度、市や州が定める一定の割合以上の家賃引き上げを行うことができません。これにより、住民は生活費の予測が立てやすくなり、長期的な計画を立てることができます。
しかし、この制度には課題も存在します。レントコントロール対象の物件は限られており、需要が供給を大きく上回っています。そのため、一度この制度の恩恵を受けた住民は、特別な事情がない限り引っ越すことはほとんどありません。新規にこうした物件に入居するのは非常に難しく、空きが出るのを待つリストには多くの人が名前を連ねています。
このような背景から、ニューヨーク市では住民の権利を守るための法律や支援団体が重要な役割を果たしています。例えば、ニューヨーク市住宅保護局(HPD)は、住民が不当な扱いを受けた場合に相談できる窓口を提供しています。また、地域のコミュニティ組織や非営利団体も、住民が自分たちの権利を理解し、適切に行使できるよう支援しています。
レントコントロールは、ニューヨーク市の多くの住民にとって、経済的な安定と安心を提供する制度である一方、その維持と運用には多くの課題が伴います。今後も住民の権利を守りながら、制度の改善と適正な運用が求められるでしょう。
家賃高騰はピークに達したのか?
ニューヨークの家賃高騰は、2023年7月にピークに達したと専門家は指摘しています。この月の平均賃料は記録的な高さを示しましたが、秋から冬にかけては例年通り賃貸市場の動きが鈍化すると予想されています。特に、今年は住宅ローン金利の上昇が不動産購入を抑制し、賃貸市場への需要が一時的に増加しました。しかし、全体的な経済状況や雇用環境の変動により、今後の賃貸市場は再び調整される可能性があります。
専門家は「ニューヨークの家賃は長期的には下がることは少なく、安定した高水準が続く」との見解を示しています。一方で、これ以上の急激な上昇は抑えられる可能性が高いです。今後の不動産市場の動向次第で、ニューヨークの賃貸価格がどう推移するかが注目されます。
日本円換算で見るニューヨークの家賃
- Studio / 617,055円
- 1BR / 831,730円
- 2BR / 1,144,520円
ニューヨークの家賃は、日本円に換算すると驚きます。
萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)
一般社団法人RCAA協会 理事
オフィス移転アドバイザーとしての実績は、600社を超える。原状回復・B工事の問題点を日経セミナーで講演をする。日々、オフィス・店舗統廃合の相談を受けている。オフィス移転業界では、「ミスター原状回復」と呼ばれている。 |