苦境のワタミ、居酒屋の帝王から宅食の覇者ワタミへ

2022.03.04

宅食の覇者ワタミ

苦境のワタミの財務は健全なのか?

ワタミの居酒屋売上は、コロナ禍前2019年から本年3月決算では72%に激減した(日本フード協会発表)。
この対策として、ワタミ創業者であり代表取締役の渡辺美樹氏の行動は素早いものだった。居酒屋のワタミ、国内270 店舗の2階以上(空中店舗)を可能な限り撤退、採算が見込めない店舗の撤退を発表。その数なんと80~100店舗である。それは、優に3割を超える撤退戦であった。普通の老舗企業は、3割を超える閉店撤退は不可能とされている。なぜなら、パート・スタッフのリストラ、配置転換に多大な労力を消耗し、人材のモチベーションは大幅に下がり、働くワーカーのワークエンゲージメントの炎は消えるものだからだ。
これは、現場を知り尽くした渡辺美樹氏の データとファクトで経営決断の発表であった。

2019年の3月期決算、グループ売上94,701 (百万円)から60,852に激減し、純利益は-11,586、自己資本率は42.5%から7.1%に急落。まさに危険水域から倒産前夜の様相に近づいているのか?

 

【参照先】

日経クロストレンド 2022/2/10(https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/01738/)
・苦境のワタミが子供用の宅食サービス 2階以上の居酒屋は撤退へ

 

図表1「ワタミ」財務状況推移

図表1ワタミ財務推移

 

危機の時は、即断即決、朝令暮改を躊躇せずやり切るリーダーが求められる。いわゆる坂本龍馬型リーダーである。何も決断できない事が最大のリスクである。

 

ワタミは居酒屋では存続不可能

渡辺美樹氏のプレスリリースでよく見受けられる「afterコロナの外食産業予測」について、“2022年いっぱい、コロナ禍では良くても6割戻るか?”、“2023年コロナが収束しても7割戻るか?”と予測されていた。

この予測は、渡辺美樹氏の確信に変わったと思われた。勇猛果敢に業態変化、焼肉ワタミ、韓国スタイル唐揚げ&卵焼き、鳥メロ、フランスチャイズの推進など、残念ながら上手くはいっていない。しかし、DXの取組み関しては、どこよりも素早く、見事であった。

 

【参照先】

経済産業省 2020/8/25 (https://www.meti.go.jp/press/2020/08/20200825001/20200825001.html)

・「DX銘柄2020」「DX注目企業2020」を選定しました

 

なぜ、国・都道府県・各省庁がサポートしても成功例が少ないのか?企業、店舗とも模索中であり、枚挙にいとまがないのが現実である。

もはや机上の論理、本に書いてある絵空事では通用しない。経営者の知見とデータとファクトで仮説を立て、未来予測と行動力が明日の命運を分ける。まずはキャシュを集め、撤退戦、赤字という血を止めることだ。

 

図表2「ワタミ」店舗推移

図表2ワタミ店舗推移

【参照先】
出典:ITmedia ビジネスオンライン「大手居酒屋チェーン14社 コロナ禍の2年間で1356店減少」(2022年2月17日)
(https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2202/17/news085.html#l_kh_2202izakaya_03.jpg&_ga=2.24022847.468883811.1645509721-674956534.1645509716)

 

次の屋台骨を支える飯の種は宅食である

2019年ワタミの業種別売上は、《外食51%、宅食38%、その他11%》、2021年度決算では、《外食21%、宅食73%、その他6%》である。

宅食は食材とセットであり、SDGs、環境、とりわけ農業と相性の良いサブスクが可能な食のビジネスである。今では1日に25万食を超える宅食を届ける。宅食には無限の可能性があり、ワタミの影響力は大である。

農業と食材をセットで行うことで、ソーシャルグットなビジネスを日本全国、世界へとグローバル展開できる。ワタミVSオイシックス・ラ・大地のサービスを競う事が宅食の地位を上げ、さらに日本の食文化の質を上げる。それは時代に選ばれた食の寵児の宿命である。ワタミ本体がこれだけの逆境であれば、フランチャイズオーナーはもっともっと苦しい。その救済事業再生も、時代に選ばれし食の寵児としての渡辺氏の使命である。

 

【参照先】
「PAKU MOGU」ワタミの食宅配

・子供が「おいしい」と認めたメニュー 主菜と副菜が15 分でできるミールキットをお届け
(https://www.pakumogu-mealkit.jp/contents/home)

 

居酒屋・日本の飲食の本当の問題点とは?

日本の飲食業の利益率は異常に低い(F30%、L30%、R10%、その他20%、利益10%)。

アメリカ西海岸、NY、ロンドン、パリ、南ヨーロッパは、利益が30%を超える(個人、小資本経営)。このデータとファクトを基準に考えると、なぜ日本だけ異常に安いのか?

それは1989年には成熟期の頂点を迎え、誰でも行った事があり、食べた事がある、イメージしやすい仕事であるため、私にもできると思える仕事だからである(参入障壁が低い)。

アスリートが引退後焼肉屋を始める、芸能人がみんなが集うレストラン兼ライブハウスを始める、宮迫博之氏の牛宮城を見れば明らかである。

このような環境下で、競争が激しい市場を勝ち抜き、存続している飲食の品質は高く、プライスは格安である。デフレ型飲食業からの脱却である。アメリカをはじめ、海外の都市とは雲泥の差である。和食が世界で、健康的であり日本の食文化である現在、この根本的原因を解決する。意識改革から始めなければならない。

 

2019年12月ドバイで鮨コースを美味しく頂いたことがある。2人でディナーが、なんと日本円換算で12万を超えるプライスであった。それでもやっとの事で予約を取れた人気の繁盛店である。鮨職人の経験が7年以上あり、海外の富裕層に人気がある職人の月給は100万円を超える。まさにシェフ、料理のマイスターである。

 

ドバイ

 

NYや西海岸でも同等の給料と思われる。ネット検索でベルリンの鮨職人募集を検索したところ、経験7年以上で会話程度の英語ができれば、日本円換算で97万から110万ぐらいの月給である。私達の基準で思う金額とは、乖離があまりにも大きい。

このように世界では、職人の価値は高い。これは飲食ばかりではなく、建設関連技能士も同じであり、全ての業種で起こっている事である。

日本のワーカーの真の問題は、持てる者・持たざる者の二極化ではない。国民の84%が所得税10%未満と、世界と比べて貧しいワーカーというファクトである。国のあり方、ライフワークスタイルをゼロから見直し、老若男女がイキイキと働くデジタル社会を実現することが重要である。

創造の創は、「傷を負う」という意味もある。変革は痛みを伴い、解もない。せめて若者はグローバル目線で修行して一芸を身につけて海を渡れ!独立は必ずできる。一国一城の主となり、自分の思いや体験をスケールし、世界の都市で磨いた腕を日本でお披露目することを切に願う。

 

店舗ビジネスの経営戦略、個人経営飲食店舗の事業再構築とは? 「個人経営店舗は、本当はどこよりも強い!お客様の言葉、言葉なき声を聴く!」

世界の都市も飲食店の経営は、個人・少額資本が約9割であり、これは日本も同じである。

店舗ビジネスは、人を通してしかサービスを提供できない。全ての店舗ビジネスはAmazonのスピードと価格には対抗できない。これは大手コンビニもAmazon Goには、便利さ、価格、スピード、ロジスティックでは対抗できないことを意味する。宅食も然りである。Amazonフレッシュとの対決では便利、価格、スピード、流通では勝てない。

 

私の独断の意見としては、Amazonと競争しない戦略が考えなければいけない。キーワードは人、人、人、人財(HR)である!

料理は、食材を料理して初めて価値を生む。キーワードは、オーガニック、SDGs、循環型農水産業である。創る人は人間、人財である。サービス業、とりわけ個人経営の外食業は、可能性が高く、大手飲食の真逆の経営戦略を実行することである。

これからのスモール店舗は、まず守りを固め、イニシャルコストを抑え、さらにFLR60%で納める。Rは(家賃)月の売上の10%、食材の質は逆に上げる、人件費も上げる、利益相反に挑戦する。方法は、値上げである。

(商売繁盛の原則はシンプル3原則)

 

DB+AI

  1. 値上げ、プライスを上げる(value提供)
  2. リピーター増・来店頻度を増やす
  3. ご新規様を増やす

これに挑戦できるのはスモール店舗であり、個人経営の店舗である。私達はビックデータとAIの空間に意識が存在している。私(執筆者)の趣向も検索も、聞いている音楽、読んでいる本、好きな料理、住所、モバイルナンバー、メアド、人間関係まで、全ての個人情報はGoogle、Amazon、FB[Meta]のFAGAMに記憶され蓄積されAIで分析されている。

 

では、ビックデータとAIにできないことは何か?

感情の動物という人(Homo sapiens)である。

人にしか出来ないことは何か?これもシンプルである。

AIに分析できないこと、それは何か?と考えると、これしかないだろう。

お客様の一瞬の表情、仕草、言葉のアクセントを一瞬で悟り、察する。そんな感性はAI にはできないということだ。

 

お客様の言葉にならない声を聴こうとする姿勢であり、店舗で働くスタッフは仲が良く、助け合い、和気藹々である。幼稚園の砂場で学んだ教えが全ての原点となる。その上でのシンプル3原則は、以下となる。

  1. いつも元気、元気を提供する
  2. 心に響くおもてなし感動提供
  3. お客様同士、スタッフ全て認め合い繋がる事

 

経験した実話を紹介しよう

  • ディズニーランドは元気を売っている

子供はワクワク!そして、どんなに高くても、「楽しかった!また来ようね」と、リピート率は何と97%である。夢の国で元気になれるのだ。

  • おもてなし感動提供

9、10年前 iPhoneショップでの光景の一コマ。若い人であふれる店内におばあさんが不安そうにいた。そこへ若い女性スタッフが寄り添い、おばあさんの言葉なき声を聴き、おもてなしの心がおばあちゃんを笑顔にかえていた。そんな心遣いが、ファンを作るのだ。

  • 繋がる・認め合う

私の故郷、伊豆に帰郷した時に友といったお店での話。

常連が集まるお店では、誰かが注文したものをみんなにお裾分け。ワイワイガヤガヤと楽しい会話と笑顔とその中心に50歳半ばのママがいる。そこへ漁師風の初老の男が、「今日は良いのが上がった」とお裾分けの真鯛。「俺が捌いてやるよ」、そしてまたお裾分けとなる。友は帰る際に、2人分2万円置き、「釣りはいらねえ」とひと言いう。そして、私と一緒に店を出た。

 


 

1、2、3を仕組み化し、デジタルシフトで情報をスケールする。キャッシュポイントは、数多あるのだ。人、人、人のヒューマンリソースで差異化を創造し、常連客の集いのお店を目指して、リアルの会話とデジタルで、SNS の繋がりの中心は店舗経営者の貴方である。

人間の喜怒哀楽は12000年前から同じだということ。違うのは外部環境、とりわけテクノロジーの進化である。人の感情とリアルのスキル+デジタルシフトに全力で挑戦しよう!

明日に向かって事業再構築を目指せ!必ず繁盛店は創れる。

 

おわりに

飲食店の5年後の生存率は2割を切ります。生き残っている貴方は、必ず強みがあり、売りがあります。貴方の情熱の炎が運を引き寄せるのです。

「人間万事塞翁が馬」である。

明日の繁盛店を脳裏に映像で焼き付けて!成功を祈ります。

 

ワイガヤ写真

 

江戸の商人は大火の際、まず先に持ち出す物は顧客台帳(取引職人台帳を含む)でした。お客様が私達の財産です。江戸の昔も令和の今も、人間の喜怒哀楽は変わりません。外部環境がテクノロジーで変わるだけです。決めるのは常に人です。

 

変化に対応できなければ、生き残りも勝ち残りもできません(ダーウィンの進化論)。大きい組織、リソースのある組織、資金豊富な組織が生残るわけではないのです。変化に適応できるリーダーで決まります。何も決断しない、何もやらない事が最大のリスクです。

 

明るく、楽しく、前向きの姿勢で事業再構築を私達RCAA 協会の専門家チームと共創しましょう!ご遠慮なくご相談ください。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。貴方のご活躍、ご多幸を祈願いたします。

 

 

2022年2月14日 誕生日に思う!私には未だできる事がある!プロボノをやり抜け!萩原 大巳!!

 

萩原大巳 萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)

一般社団法人RCAA協会 理事長
【協会会員】株式会社スリーエー・コーポレーション 代表取締役CEO

  • ワークプレイスストラテジスト
  • ファシリティプロジェクトマネージャー

オフィス移転アドバイザーとしての実績は、600社を超える。原状回復・B工事の問題点を日経セミナーで講演をする。日々、オフィス・店舗統廃合の相談を受けている。オフィス移転業界では、「ミスター原状回復」と呼ばれている。