週刊ビル経営・掲載記事の詳細

2017.08.17

 

所有ビルの価値向上に向けて努力を重ねるビルオーナーの数は決して多くはない。だからこそ厳しい市場を生き残る上で差別化が有効となるのだ。差別化と言うからには、単なる省エネでは当たり前すぎる。重箱の隅をつつくような、コロンブスの卵的なサービスこそ、テナントの心を打つのである。そのようなサービスを本特集から見いだして欲しい。

 

スリーエー・コーポレーション
代表取締役 萩原大巳氏

 

オフィス移転業務を行うスリーエー・コーポレーション(東京都千代田区)は、これまで不動産業界の常識に縛られない原状回復工事費用の削減をテナント企業に対して提案してきた。

 

同社代表の萩原大巳氏は「全ての産業はカスタムメイドと大量生産の規格品の2つに分かれます。不動産業界も同じです。以前はテナント側も規格品のオフィスを使用するだけでしたが、従来の価値観に縛られていないIT企業や外資系企業はオフィスをカスタマイズして使用するのが当たり前となっています」と内装に対するテナントの意識変化を語る。

 

このような価値観に立てば、一度原状回復工事を行い、オフィス内装を真新しくした上で内装工事を実施するという発想自体、無駄が多い。しかし大手不動産会社を含めビルオーナーは原状回復工事を必ず実施しなくてはいけないという慣習に縛られていると萩原氏は指摘する。

 

また平成22年からIFRS(国際財務報告基準)が適用されたことで、一部のテナント企業は原状回復工事費用や建物解体工事費用などの資産除去債務算定を行う必要が出てきたことが原状回復工事にも影響を与えているという。

 

「資産除去債務の会計基準の適用によって損失計上額が増大しましたが、増大の要因の一つが原状回復工事費用の中に本来借主側が負担すべきでない資産区分の箇所が工事内容に加えられていることがあるからです」

 

スリーエー・コーポレーションは原状回復工事費用のコスト削減サービスを実施している。「原状回復コストを削減する」と聞くとビルオーナー側は警戒するかもしれないが、同社は豊富な人的ネットワークを活用して、法務的・建築的に適正な原状回復費用を算定するので「安かろう悪かろう」の原状回復工事にはならないとのこと。

 

またビルオーナーにとって最大の課題となるリーシングについて「居抜きオフィス」というオーナー・テナント双方にメリットのある原状回復工事に依らないコスト削減手法を提案する。「店舗については『居抜き』が浸透していますが、オフィス業界に『居抜き』が浸透するにはもうしばらく時間がかかるかもしれません。

 

だからこそ、テナントが退去したら必ず原状回復工事を実施しなくてはならないという価値観に縛られるのではなく、時には『居抜き』として賃貸する、あるいは業種を絞ってテナント募集するなど柔軟にテナントに対してメリットを提供できるような工夫をすることが大切です。

 

当社は原状回復・オフィス移転という業務に特化し一点突破で顧客に対するメリットを提供してきました。原状回復工事を武器にビルの価値を高めたいとお考えのオーナーがいましたらご相談ください」(萩原氏)