~退去時に損しないための完全チェックポイント集~
退去トラブルで“損しない”ために
オフィスや店舗、事務所の賃貸契約を終了し退去を控えるとき、多くの法人・事業者が直面するのが「原状回復」に関するトラブルです。
「壁紙の張替え費用を全額請求された」
「通常の使用による床の汚れまで修繕対象にされた」
こうした問題は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と2020年施行の民法改正(第621条)を正しく理解することで、多くが未然に防げます。
*国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
原状回復の定義から、ガイドライン・民法改正の実務への影響、そして契約特約の注意点までを、オフィス・店舗・事務所の事業用賃貸を前提にわかりやすく解説します。
原状回復とは? まず押さえるべき定義
原状回復とは、借主が退去時に物件を「元の状態に戻す」ことを意味します。ただしここで注意すべきは、
- 通常損耗(経年劣化、日焼け、家具跡など)は対象外
- 借主の故意・過失・用途外使用による毀損が原状回復義務の対象
つまり、「普通に使っていたことによる劣化」を理由に費用を請求された場合は、不当な可能性があります。
ガイドラインとは? 裁判でも重視される「実務ルール」
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」のポイント
- 通常損耗は原則として貸主負担
- 修繕費は設備の耐用年数を考慮
- 借主負担とするには特約が必要で、その内容は明確であることが条件
このガイドラインは、法的拘束力はないものの、裁判実務では重要な参考資料として扱われています。とくに、事務所やオフィスの原状回復トラブルでも広く適用されています。
民法改正(2020年)で何が変わった?
2020年4月の民法改正により、第621条に以下のような条文が明記されました。
「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗および経年変化を除く」
つまり、
- 「通常損耗・経年劣化は原状回復義務に含まれない」と法律で明文化
- これまでは曖昧だった負担区分が、法的に明確になった
ただしこの規定は住居用契約が前提であり、事業用のオフィス・店舗契約には「特約」による変更が可能です。
オフィス・店舗の契約で要注意!「特約」の落とし穴
事務所や店舗などの法人契約では、原状回復義務に関する「特約」が契約書に盛り込まれることが一般的です。
よくある特約例
- 「壁紙の張替え費用は借主負担」
- 「床や天井の修繕は全額借主」
- 「退去時のハウスクリーニングを義務化」
これらは、ガイドラインや民法の規定を「契約で上書き」している可能性があるため注意が必要です。
特約が有効となる条件
- 内容が具体的である(例:「◯年以内に破損した場合は~」など)
- 借主が内容を理解し、書面で合意している
- 借主に一方的・不当な不利益がない
これらの条件が欠けていれば、特約自体が無効と判断されることもあります。
原状回復で“損しない”ための3つのチェックポイント
- ガイドラインの内容を理解する
→ 通常損耗の範囲を把握し、請求が妥当か見極める - 契約書に記載された特約を事前に確認
→ 内容が曖昧でないか、過剰な義務がないかをチェック - 民法第621条の保護規定を理解し、必要に応じて交渉する
→ 交渉時は専門家に相談するのが安全
よくある質問(FAQ)
Q1. 原状回復費用の相場はいくら?
A:広さや用途にもよりますが、10坪の事務所で30~80万円が目安。内装・設備状態で大きく変わります。
Q2. 通常損耗かどうかの判断基準は?
A:ガイドラインでは「日焼け・家具跡・自然劣化」は通常損耗と明記されています。
Q3. 原状回復の交渉はできますか?
A:可能です。契約前・退去前に特約条項を確認し、費用分担の見直しを申し出ましょう。
オフィスや店舗の退去時に、損しないために
オフィス・店舗・事務所の原状回復は、契約前の確認と法的知識が鍵です。ガイドラインや民法改正の内容を押さえ、特約条項を冷静に精査することで、不要な費用負担やトラブルを防ぐことができます。
- 原状回復は“通常損耗を除く”が原則
- 特約がある場合は内容次第で借主負担が発生
- 不安があれば、専門家に相談を!
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萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)
一般社団法人RCAA協会 理事
オフィス移転アドバイザーとしての実績は、600社を超える。原状回復・B工事の問題点を日経セミナーで講演をする。日々、オフィス・店舗統廃合の相談を受けている。オフィス移転業界では、「ミスター原状回復」と呼ばれている。 |
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