はじめに
日本に拠点を構える外資系企業は3000社を超えています。これらの企業は世界中の主要都市に拠点を持っており、特にビックテック企業は国境を越えて活躍しています。2030年までに、アジア全体のGDPシェアは世界全体の4割を超える見込みです。この成長市場を取り込むためには、世界基準の借地借家法が必要とされます。
OECD(経済協力開発機構)の38ヶ国では、厳格な原状回復やABC工事の存在はありません。また、一律家賃の12倍の預託金(デポジット:敷金)もありません。既に、スクラップ&ビルドから持続可能な社会を実現するためのリーシングスタイルに変更されています。日本の経済の盛衰を決める上で、香港、シンガポール、シドニー、ムンバイなどアジアでの拠点の位置は重要です。成長するためにはビックテック企業の誘致が大きく影響します。
原状回復とは何か?賃貸物件の基本を解説
原状回復とは、賃貸物件を借りた際に、退去時に入居時の状態に戻すことを指します。これは居住用物件だけでなく、オフィスや店舗にも適用される重要な規則です。
原状回復費用が高額になる根本的な理由
原状回復費用が高額になる理由は多岐にわたります。一般的な居住用物件の場合、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が基準となります。一方、オフィスや店舗物件の場合は、原状回復の範囲や工事内容が賃貸借契約書や特約によって異なり、通常、入居時点の状態に戻す内装設備工事が必要になり、これが費用を押し上げる一因となります。
指定業者制度と原状回復費用の関係
多くの事業用賃貸物件では、原状回復や内装設備工事ができる業者が指定されており、これにより競争原理が働かず、費用が高くなります。
「原状回復の重層構造」費用高騰の背景を解明
大手デベロッパーが所有する物件では、原状回復工事が複雑な重層構造を持つことが一般的です。この構造では、指定業者がトップとなり、その下に複数の下請け業者が位置づけられます。各階層に中間マージンが発生するため、最終的な費用が高くなります。その反面、工事ルールや品質の統一、メンテナンスの対応など、ビルオーナーにとっては大きなメリットがあります。
「特殊工事の必要性」原状回復費用を押し上げる要因
飲食店やモデルルーム、研究室など、特殊な給排水設備を設けている場合、これらの設備の撤去が必要になります。また、レントゲン室のような特殊な内装や大型の換気扇、シャンデリアなどが設置されている場合、それらを撤去するための専門的な工事や廃棄処分が必要となり、これが原状回復費用の増加につながります。
「給排水設備の撤去」原状回復における隠れたコスト
特に飲食店などで設置されている給排水設備を撤去する場合、ビル全体の水道を止める必要が出ることもあり、その結果として原状回復費用が高くなる傾向にあります。これは、特殊な設備の撤去には高度な技術と手間が必要となるためです。
オフィス・店舗の内装特殊性と原状回復費用
オフィスや店舗が特殊な内装を持つ場合、原状回復時に高額の費用がかかることがあります。例えば、防音室の設置や特殊な壁の構造など、一般的な内装とは異なる特殊な要素があると、それを撤去し元の状態に戻すための費用が嵩みます。
「設備撤去と原状復帰」予想外のコストを理解する
入居時に設置されていた壁や設備を撤去した場合、これらを元の状態に戻す必要があります。契約書や内装工事の記録が不明瞭な場合、これらの変更が見過ごされ、工事完了後に追加の費用が発生することもあります。
原状回復費用の減額と対策
原状回復内容は、すべて賃貸借契約書の特約で範囲も復旧も決まります。その契約書特約を理解し、「原状回復見積条件書」を作成できる専門家が必要です。その上で「原状回復見積条件書」に基づいて、指定業者以外の信頼の高い業者に原状回復工事見積書を作成してもらってください。そして、見積書を比較して、真摯に協議してください。
原状回復の交渉力とは?知見力!
原状回復の交渉力とは、建築基準法、宅地建物取引業法、改正民法で理解、そして応用できる専門家がエビデンスを作成し、そのエビデンスを基づき交渉する力です。エビデンスと知見力で結果が決まります。
「契約書チェック」原状回復における重要ポイント
賃貸借契約書や特約の確認は、原状回復における費用負担を理解する上で不可欠です。契約内容に基づいて、原状回復の範囲や工事内容に関する交渉を行うことが重要です。不明瞭な点や合意に至らない事項があれば、法的な助言を求めることも考慮すべきです。
FAQ
1.原状回復費用が高額になる主な理由は何ですか?
原状回復の範囲が広い、指定業者の利用、特殊な工事や設備の撤去などが主な理由です。
2. 原状回復費用を削減する方法はありますか?
はい、あります。専門家の作成した「原状回復見積条件書」に基づき契約内容を確認して、必要以上の工事が行われないようにすることが重要です。
3. 契約の内容を確認することの重要性は何ですか?
契約内容を確認することは、原状回復の範囲や条件を正確に理解し、不当な費用請求を避けるために重要です。また、契約の詳細を把握することで、交渉時に有利な立場を確保し、適切な費用削減が目指せます。
4. 原状回復における法的な助言の必要性はありますか?
法的な助言は、契約内容が複雑である場合や、費用に関する紛争が生じた場合に特に重要です。法的な観点からのアドバイスを受けることで、契約違反や不当な請求に対する適切な対処が可能となります。
執筆者コメント
日本の賃貸市場の特徴である移転元原状回復高騰問題、移転先のB工事高騰問題、敷金返還問題について、グローバルデベロッパーC&W(イリノイ州シカゴ)の賃貸市場レポートでは、「ビルに紐付けされた指定業者制度により工事費が極めて高くなる」と指摘し、その結果として敷金(預託金:デポジット)も高額になることを指摘しています。これはまさに正論です。賃貸借契約もそろそろソフトローの賃貸に移行するべきでしょう。
執筆者紹介
萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)
一般社団法人RCAA協会 理事
原状回復・B工事適正査定のパイオニア |