資産除去債務定義とは

有形固定資産取得にともない、特に建築物などは将来建築物を解体、アスベスト処理、土壌汚染、PCBを除去、処分、復旧などの義務が発生し、見積可能なものを資産除去債務と定義としています。

 

資産除去債務指針の経緯と背景

日本では、2008 年(平成 20 年)3 月まで電力会社の原子力発電解体引当金など特定の事情以外資産除去債務を負債に計上する会計慣行も法律もありませんでした。

 

資産除去債務会計基準が適用された理由は、下記の通りです。

 

  1. 投資家の要望による確かな財務諸表の開示

有形固定資産の除去に関する詳細を将来確実に発生する費用負担を財務諸表に反映(企業会計基準第22号)投資情報として必須です。

  1. 国際会計基準(IFRS)と日本会計基準との比較において差異を縮小すること

グローバル化が加速している現在、上場企業は利益の 7 割は海外事業であり、IFRS との差異を縮小を目的としています。特にアスベスト処理,PCB 処分、土壌汚染除去、対象廃棄物処理など環境債務は SDGs がスタンダードになった現在、建築物の解体など負債、資産、両会計基準のコンバージエンスに向けた実務は資産除去債務は必要不可欠です。

 

企業会計基準第 23号、第24号とは

  1. 財務諸表規則

有形固定資産に区分される資産のほかにリース資産、建設仮勘定、投資その他資産も資産除去債務が存在している場合は対象となる。借地借家法においても宅地建物取引士は、原状回復義務、耐震基準、アスベスト処理検査済み、PCBなどの環境債務は重要事項説明義務がある。特に 1989 年以前の土地、建物の調査は、対策をとられていない建物が多く見受けられ注意を要します。

  1. 有形固定資産の除去及び修繕

「除去」とは、有形固定資産を用役提供から除外することを指します。「企業会計基準第24号」では、除去の具体的方法として転用、用途変更は対象外であり、売却、廃棄、リサイクルその他方法が含まれています。資産除去債務の対象の有形固定資産が遊休状態にある場合は、除去の対象外とされました。除去、修繕については、専門家の調査のうえ適切な処理を実施してください。

 

企業会計基準第26条「通常の使用」とは

通常の使用とは、有形固定資産を意図した本来の目的の為正常に使用することを指し、企業会計基準第26条で計上します。ただし、不適切な使用による異常が発生した場合は使用期間にわたり費用配分の会計処理ではなく、有形固定資産の減損に関わる会計基準となります。

 

企業会計基準第28条「法律上義務に準ずるもの」とは?

有形固定資産を除去、処理の義務のほか有形固定資産そのものは、義務でなくとも建築物等有形固定資産に含有されている有害物質を特別な工法で除去する義務も同等の義務となります。

 

法律上の義務に準ずるものとは、債務の履行を逃れることは不可能な義務を指し、法理、法令の義務と同等の義務とされています。

 

資産除去債務・原状回復適正価格見積方法とは

 

資産除去債務で多いのは、原状回復見積です。日本の賃貸契約では明け渡しにともなう原状回復義務が記されているからです。

一般的には原状回復の施工会社は指定されており、入札業者との費用比較では A クラス、スーパーグレードクラスビルの原状回復指定業者見積は平均値で 2 倍近い価格であるというデータもあり、工事費高騰問題はトラブルの大きな原因であり、数多発生しております。

家電量販店の資産除去債務の計上金額との差異金額は上記の問題を顕にしました。

大手量販店側も建築不動産に精通しており、工事費を把握しています。その計上金額との差異は平均2 倍の近くの修正を余儀なくされました。

 

また、日本式敷金(デポジット)の慣例で敷金、保証金は、東京都心はオフィスでも家賃の12倍と高額です。保証金は家賃の債務不履行の担保の意味合いのほか、出店の権利金、建築協力金など大きな預託金です。指定業者、賃貸人は、敷金保証金から原状回復費を差し引けば良く回収リスクがありません。負債、資産両計上しますので見積(適正費用)が必要です。

 

 

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